石引|ふわとろオムライスと夜の名残を味わう「月の砂漠」
金沢大学附属病院の近く、石引商店街にある「月の砂漠」さん。入口は少し暗めで、一見すると営業しているのか分からないような佇まいですが、その控えめな雰囲気こそが隠れ家的な魅力です。
扉の先には水槽の光と、ふわとろのオムライスを目当てに人が集まる温かな時間がありました。
気取らず本音で話してくれる店主の平内さんの人柄まで含めて、また思い出したくなる1軒です。
水槽のある明るい店内で、職人のオムライスとドリアをゆっくり味わう「月の砂漠」
金沢大学附属病院の近く、石引商店街にあるお店
金沢大学附属病院の近くにある「月の砂漠」さん。北陸鉄道バス「石引広見」バス停から徒歩すぐの場所にあり、公共交通機関でも訪れやすい1軒です。お店は「パークビューハイツ」1階にあり、車の場合はテナント共用の駐車場を利用できます。
駐車場は建物の表に5台・裏に2台の計7台分ありますが、他のテナントの利用もあるため、基本的には表側の3台ほどが使えるイメージです。
石引商店街を歩いていると、入口に大きなオムライスの写真が載った看板が見えてきます。思わず足を止めたくなる、おいしそうな存在感です。
ただ、入口まわりの照明は少し暗め。一見すると営業しているのか不安になるかもしれませんが、しっかり営業しています。
その控えめな入口も含めて、知る人ぞ知る隠れ家的な雰囲気。この店の味を知っている人が誰かにすすめ、気になった人がそっと扉を開ける。そんなふうに広がってきたお店です。
水槽の光がゆれる、落ち着いた店内
外の空気から少し切り替わるように、扉の先には明るく、でもどこか静かな時間が流れています。いわゆる「いらっしゃいませ」と大きく迎える雰囲気ではないかもしれません。けれど、その少し控えめな空気も含めて「月の砂漠」さんらしさ。個人的には、その気取らなさがとても好きでした。
かつてこの場所にはステージがあり、音楽好きの人や美大生たちが集まる夜の店として親しまれていました。今は客席として使われ、水槽のある明るい店内へ。夜の音楽とお酒の雰囲気を少し残しながら、現在はオムライスやドリアを目当てに訪れる人が多いお店になっています。
座席は手前のカウンター席が4人分、その奥に4人席が2卓と2人席が1卓あります。



コンパクトな店内だからこそ、料理を待つ時間もゆっくり過ごしたくなります。ランチタイムは混み合うこともあり、提供に少し時間がかかる場合もありますが、それは1皿ずつ丁寧に作っているからこそです。
また、上に注目すると、星がぶら下がり、ちょっと落ち着くような雰囲気です。奥のほうには、水槽が見え、心がほっと安心します。


ふわとろ卵と炊き込みチキンライスのオムライス
「月の砂漠」さんの看板メニューは、オムライス。初めて訪れる人には、トマトソースとホワイトソースを合わせたピンクソースのオムライスが、ナンバーワンメニューとして案内されています。

●オムライス トマト&ホワイトソースのミックスソース 1,230円(税込)
卵はふわとろで、しっかり厚みのある仕上がりです。スプーンを入れると、やわらかい卵がゆっくりほどけて、ソースとチキンライスを包み込んでいきます。
ひとくち食べてまず感じたのは、卵だけが主役になりすぎていないことでした。まろやかな卵、トマトソースのほどよい酸味、ホワイトソースのコク、そして中のチキンライス。それぞれが別々に目立つのではなく、口の中で1つの味にまとまります。
特徴的なのは、チキンライスの作り方です。一般的なチキンライスは、炊いた白ご飯に鶏肉や玉ねぎ、ケチャップなどを炒め合わせて作ることが多いもの。けれど「月の砂漠」さんでは、最初からチキンライスとして炊き上げるスタイルをとっています。
米を炊く段階で、鶏肉や玉ねぎなどの旨みを重ねることで、ご飯そのものに味が入り込みます。そこへ仕上げのトマトソースを絡めることで、炒め合わせるだけでは出にくい、奥からじんわり広がる味になります。
メニューを広げすぎず、1つひとつに手間をかける。そんな姿勢が、ふわとろの卵と味のしみたチキンライスに表れています。
ドリアやカレーにも広がる、自家製ソースの味

オムライスと並んで楽しみたいのが、ドリアやカレーです。
平内さんが大切にしているのは、既製品に頼らず、自分で作ること。ソースには野菜や牛肉を使い、じっくり煮込んで仕上げます。ものによっては、ソース作りに3日ほどかけることもあるそうです。
メニューにはフルーツカレーもあります。フルーツを使いながらも、甘い子ども向けの味ではなく、辛さもしっかりある大人向けの味わい。ここにも、ほかの店と同じにはしたくないという平内さんらしさがにじみます。
テイクアウトは基本的に行っていません。また、大人数での来店は、状況によっては断ることもあるのだとか。オムライスは時間が経つとおいしさが変わってしまうことや、昼の忙しい時間帯に対応が難しいことが理由です。できたての状態で、お店で味わってほしい。そんな思いが伝わってきます。
夜の店として始まり、洋食店へ受け継がれた物語

もともとこの場所は、初代店主が始めた夜メインのダイニングバーでした。初代店主は美術大学の卒業生で、美術制作や音響の仕事にも関わっていた方。店内にはステージがあり、音楽好きの人や美大生たちが集まる場所だったそうです。

「月」という言葉には、夜の時間をゆっくり過ごすイメージが込められていました。
その後、初代店主から平内さんへとお店は引き継がれます。店名やロゴはそのままに、空間や営業スタイルは少しずつ変化していきました。
夜の名残を受け継ぎながら、今はオムライスやドリアを楽しめる洋食店へ。お店の空気にどこか落ち着きがあるのは、そんな背景があったからかもしれません。
16歳から飲食の世界へ。経験が味の奥行きになる
店主の平内さんは16歳の頃から飲食の世界に入り、フルーツパーラー、レストラン、近江牛の専門店、うどん店など、さまざまな現場で経験を重ねてきました。
フルーツパーラーではデザートやドリンクに触れ、レストランや専門店では調理の幅を広げ、うどん店では麺を打つ仕事も経験してきたそうです。
その経験があるからこそ、オムライスやドリア、カレーといったメニューにも、他の専門店にはない魅力が生まれています。
たとえばオムライスなら、チキンライスを最初から炊き上げること。ドリアやカレーなら、野菜や牛肉を使ってソースをじっくり仕込むこと。料理ごとに見せ方は違っても、根っこにあるのは、素材の旨みをどう活かすかを考えながら作る感覚です。
平内さんは、気取らず本音で話してくれる、とても親近感の湧く方でした。
きれいな言葉でというより、聞いたことに対して素直に返してくれる。その距離感が、料理にもお店の空気にもつながっているように感じます。
「何でもできる」とは言わない。でも、長年の経験があるからこそ、必要なものを見極め、自分の店で出すべき味を作ることができる方です。
「月の砂漠」さんの料理が印象に残るのは、卵のやわらかさやソースの味だけではありません。作り方の1つひとつに、いろいろな現場を通ってきた平内さんの工夫とスキルがにじんでいます。
だからこそ、食べ終わったあとに残るのは「おいしかった」という満足感だけではなく、「この人が作るから、この味になるんだ」という納得感でした。
口コミで受け継がれる、日常のひと休み
「月の砂漠」さんに来られる方は、Googleマップなどの情報を見たり、口コミで知ったりして訪れる場合が多いそうです。富山方面や高岡から訪れる人もいて、土日には混み合うこともあります。
平内さんは、美味しいものを作れば、お客さんは自然に来るという考え方を大切にしてきました。

支払いの話にも、そのスタンスが少し表れていました。各種カード決済に対応している理由をたずねると、どんなお客さんが来ても対応できるようにしている、と話してくれました。
もう1つ、個人的に面白いなと思ったのがコーヒーです。

セットのドリンクとして頼めるコーヒーは、タイミングが合えばサイフォンで淹れてくれるそう。
オムライスやドリアのお店で、セットドリンクがサイフォンで出てくるところに、何か懐かしさも感じます。
入口は控えめで、宣伝も大きくはしない。けれど、来てくれた人にはできるだけ困らないようにしたい。そのさりげない気遣いが、このお店らしくて好きなところです。
1度食べた人がまた来てくれる。誰かにすすめてくれる。その1つひとつの積み重ねで、お店は続いてきました。常連さんの中には、席に着くだけで注文がわかる人もいるそうです。
学校の先生からの紹介で子どもたちが職場見学に来ることや、学生同士の口コミで来店することもあるとのこと。
好きな人が見つけて、扉を開けて、また食べに来る。料理のおいしさだけではなく、ここで過ごす時間そのものに惹かれる人がいるからこそ、自然と人が集まっているのだと思います。
ふらっと入って、温かい料理を食べて、少し肩の力が抜ける。そんな日常のひと休みとして、「月の砂漠」さんはそっと受け継がれているお店です。
INFORMATION
店名:
月の砂漠
住所:
石川県金沢市石引1-5-26 パークビューハイツ1F 104
(駐車場あり)
電話番号:
076-255-3819
営業時間:
11:00〜22:00 (ラストオーダー 20:50)
日曜日 11:00〜15:00(ラストオーダー 14:40)
定休日:
なし
一人当たりの予算:
〜¥2,000
※記事内の情報は記事執筆時点のものです。正確な情報とは異なる可能性がございますので、最新の情報は直接店舗にお問い合わせください。
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