香林坊|定番が主役。職人技が光るインド料理「アシルワード Artisanal Indian Cuisine(アーティザナル・インディアン・キュイジーヌ)」

香林坊|定番が主役。職人技が光るインド料理「アシルワード Artisanal Indian Cuisine(アーティザナル・インディアン・キュイジーヌ)」

街中を穏やかに流れる用水に沿って個性豊かな店が並ぶ、香林坊・長町の「せせらぎ通り商店街」。

この地に構えて10年以上になるインド料理店「アシルワード Artisanal Indian Cuisine(アーティザナル・インディアン・キュイジーヌ)」さんは、有名レストランガイドにも掲載された、金沢を代表する人気店のひとつです。

華やかさやインパクトではなく、このお店が大切にしているのは、毎日でも食べたくなるような定番のおいしさ。

バターチキンやラッシーなど、インド料理に詳しくなくてもどこかで耳にしたことのあるメニューに、丁寧な手仕事がそっと重ねられているから、心までほどけていくような味になるのです。

そんな“よく知っているはずの味”が、思いがけず深くて、やさしいと気づいたとき。きっとこの店に、あなたの“定番”が生まれていきます。

自分だけの“おいしい”が、きっと見つかる。「アシルワード Artisanal Indian Cuisine(アーティザナル・インディアン・キュイジーヌ)」

「アシルワード」さんがあるのは、金沢市の中心部、香林坊・長町エリア。

百貨店やファッションビル、ホテルなどが立ち並ぶ百万石通りと、昔ながらの石畳や小路が残る長町武家屋敷跡。その間を縫うように流れる鞍月用水に沿って広がる、せせらぎ通り商店街の一角にあります。

 

いつもの道の先に、ちょっと旅した気分になる

優しい色合いのイエローベージュの壁に、程よく植物が配置された建物は、街にすっと溶け込む落ち着いた佇まい。

扉を開けて最初に広がるのは、木製のベンチやイスとテーブルが並ぶ、落ち着いた1階席。
温かな雰囲気の店員さんたちが、にこやかに迎えてくれます。

まるでトンネルのようなアーチ形の入り口は2階へ続いています。
壁には、華やかな色合いで繊細に描かれた花々。
足を進めるたび、少しずつ日常から離れていくような、そんな気分になります。

柔らかな自然光が心地よく差し込む2階席には、テーブルが8卓。
すっきりと清潔感のある空間に、インドらしいインテリアがさりげなく彩りを添えています。
金沢の中心部にいながら、ゆるやかに旅するような時間が流れます。

 

仕込みにも表れる店名に込められた思い

「アシルワード」さんは、2024年春、店名の英語表記を一部リニューアルされました。

以前の「アシルワード Indian & Nepali Restaurant(インド・ネパール料理レストラン)」から、「アシルワード Artisanal Indian Cuisine(手仕事による丁寧なインド料理 ※筆者訳)」へ。

“Artisanal” には「職人による」「手作りの」といった意味があり、その言葉選びからお店の姿勢が伝わってきます。

そんな「職人のように、丁寧に」という思いは、日々の仕込みからも伺い知ることができます。

インドカレーのおいしさのカギは、「グレイビー」と呼ばれるベースのソース。玉ねぎとスパイス、トマトをじっくり炒めて作るこのソースに、お肉や野菜などの具材を加えて、それぞれのカレーが仕上がっていきます。

このグレイビーは、注文が入ってから一から作るには時間がかかるため、どのお店でも事前に仕込んでおき、日持ちがするので数日保存するのが一般的だそう。でも、「アシルワード」さんではこのソースをほぼ毎日のように仕込んでいます。

その理由は、毎日たくさんのお客さんが来てくれるから。仕込んだソースがすぐになくなるぶん、つねに新鮮なものを使える——つまり、鮮度の良さ=おいしさにつながっています。

手間はかかるけれど、「おいしいものを出したい」という思いがあるから続けられる日々の下仕事

たくさんの人が食べに来てくれるから、また丁寧に仕込む。

そんな前向きな循環が、毎日のカレー作りを支えています。

 

気軽に楽しめるランチメニュー

ランチはライスやナン、数種類の日替わりカレーからいくつか選べる気軽なスタイルです。

この日はカレー3種類とナンの組み合わせで、アイスティーもオーダーしました。

平日のランチメニュー カレー3種類 1,300円(税込)
カレーは左がほうれん草のソースで仕上げたチキンカレー、右がダールフライ(レンズ豆のカレー)、手前が辛口仕上げのキーマカレーです。

●シングルエステート茶葉のアイスティー 500円(税込) ※季節限定
アイスティーはスリランカのキャンディ(春摘み)を使用。ふくよかな香りとともに、口の中をさっぱりとさせてくれます。

 

豊富なメニューから選ぶ私だけの定番“インド版定食”

一方、ディナーは単品メニューが豊富で、自由に組み合わせを楽しめるのが魅力

ここからは、よく通っている私自身の視点から、「アシルワード」さんのディナータイムの楽しみ方をご紹介します。

私にとって「これを食べると落ちつく」と感じる定番は、主食、汁物、主菜、副菜を組み合わせた、いわば“インド版の定食”

1品ずつがしっかりボリュームがあるので、この楽しみ方は誰かを誘ってシェアするのが基本です。

そんな定食のようにバランスよく楽しめる、私のある日の組み合わせです。

 

●マトン・ドピアーザ  1,450円(税込)まず主菜に選んだのは、玉ねぎをふんだんに使ったカレー“ドピアーザ”。インド人にとっての定番のカレーで、今回はしっかりお肉が食べたくて、マトンを選びました。チキンやパニール(カッテージチーズ)の“ドピアーザ”もあるので、好みや気分に合わせて楽しめます。

 

●じゃが芋とほうれん草のサブジ 900円(税込)副菜には、ほうれん草とじゃが芋を、トマトとシンプルなスパイスで炒めたヘルシーな1皿を。くたくたのほうれん草と、しっとりしたじゃがいもに、トマトの酸味がちょうどよく絡んで、どこか落ち着く味です。

 

●ダールフライ 1,100円(税込)スープの代わりになるのが、レンズ豆を煮込んだやさしい味わいのカレー。
ほんのり甘くてとろみがあり、まるでお味噌汁のように“ホッ”とできる存在です。

 

●バスマティライス 450円(税込)華やかな香りのインドの長粒米・バスマティライスは、日本の米よりも軽くて、つい食べすぎてしまいます。

 

●タンドールロティ 500円(税込)全粒粉で作るタンドールロティは、小麦・水・塩だけのシンプルな生地を職人技で焼き上げた1枚。

ライスやロティにおかずやカレーを少しずつ盛り合わせて、自分だけの定食に
どの料理も塩をベースにした味つけなので、混ぜても喧嘩しません。
むしろ、異なるスパイスが交じり合って、より深い味わいを楽しめます。

 

あなただけの定番を探しに

鮮やかに描かれたヒンドゥー教の神・ガネーシャ

オーナーの千葉さんが目指すのは、誰が食べても「おいしい」と感じられる料理
それは、日頃からスパイスに親しんでいるカレーマニアはもちろん、ご近所の家族客や旅の途中でふらりと立ち寄った海外のお客様まで——まさに“誰にとってもおいしい”を目指した料理です。

だからこそ、お店のこだわりをいちばん感じられるのは、“定番”と呼ばれる料理たち
たとえば、バターチキンカレーやラッシー。
インド料理に詳しくなくても、どこかで名前を聞いたことがある、そんな“定番”のメニューです。
でも、「アシルワード」さんで出会うそれらは、想像していたよりもずっと丁寧で、じんわりと深い味がします。

「この料理、こんなにおいしかったっけ?」
馴染みのある料理だからこそ、その“ちがい”にふと気づいたとき、ちょっとだけ気持ちが動く。
派手さはなくても、食べ終えたあと、自然とまた食べたくなる味です。

私にとっての定番が、「インド版定食」であったように、きっと、あなたにも“自分の定番”が見つかるはず。

今日は、どんな1皿に出会えるでしょうか。
よかったら、あなたの定番を見つけに出かけてみてください。

INFORMATION

店名:

アシルワード Artisanal Indian Cuisine(アーティザナル・インディアン・キュイジーヌ)

住所:

石川県金沢市長町1丁目4−59
(駐車場なし・近くに有料パーキングあり)

電話番号:

076-262-2170

営業時間:

ランチ 11:30〜14:30(入店は14:00まで)
ディナー 18:00〜22:00(入店は21:00まで)

定休日:

月曜日(祝日の際は、翌火曜日)

一人当たりの予算:

¥2,000~¥3,000

※記事内の情報は記事執筆時点のものです。正確な情報とは異なる可能性がございますので、最新の情報は直接店舗にお問い合わせください。

WRITTEN BY
あすか

あすか

ライター

車を持たず金沢で暮らして10年。バスとまちのり、時々カーシェアな生活です。歩きながらいろんなお店を見つけるのが楽しみ。好きな魚は鯵。個人店の多い金沢はお店の方々が魅力的。お店のこだわりや、その方の人となりが伝わる記事を発信していきたいです!