
湯るっと、かなざわ。銭湯めぐり。

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諸江|「諸江の湯」でポカポカにととのう。〜湯るっと、かなざわ。銭湯めぐり。vol.5
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金沢市諸江にある「pocapoca 諸江の湯」は地元民から愛される昔ながらの銭湯に新しい風を吹き込む“銭湯イノベーション”の真っ最中。能登海洋深層水のお湯に、こだわりのコンパクトサウナ、オリジナルアイスの開発まで。心も身体もぽかぽかにととのう1日を、湯るっと体験してみる。
目次
愛され銭湯イノベーション「pocapoca(ポカポカ)諸江の湯」でポカポカにととのう。
ポカポカの看板が目印。アクセス抜群の地域の憩いの場
pocapoca(ポカポカ)のかわいい看板が目印の「諸江の湯」。富士山と日の出のロゴが印象的で、遠くからでもすぐに見つけられる。金沢駅から車でわずか6分という好立地にありながら、約48台分の広々とした駐車場を完備しているのが嬉しいポイント。入口はわき道からアクセスでき、建物の裏手には貯湯槽と煙突が見え、銭湯らしい趣も感じられる。
駐車場は3か所。計48台。
6時から24時まで(月・金は10時から)という東京スタイルのロング営業で、早朝から深夜まで多くの人々の憩いの場となっている。年中無休(1月1日のみ休業)で、朝風呂を楽しむ地元の常連さんから、仕事帰りにリフレッシュしたいサラリーマンまで、幅広い層に愛され続けている。
待合室はまるでデザイナーズカフェ。充実の設備でくつろぎの時間
1歩足を踏み入れると、まるでデザイナーズカフェのような洗練された待合室が迎えてくれる。広々とした空間には、リラックスできるハンモックやロッキングチェア、マッサージチェアまで設置されており、「銭湯は湯船に浸かるだけの場所」という概念を覆す、くつろぎの時間を過ごせる場所となっている。エアロバイクも設置されており、健康志向の方にも配慮した設備が充実している。
デザイナーズカフェのような待合室。
支払いは現金だけでなく、PayPay、d払い、au payなどの各種コード決済にも対応。クレジットカードでの支払いも可能。石川県民の小学生以下なら、プレパス(プレミアム・パスポート)があればいつでも無料で利用できるという、地域密着の心遣いも嬉しい。
券売機。QR決済などは受付で直接支払える。
無料Wi-Fiも完備されており、湯上がりにゆっくりと過ごすことができる。
「pocapoca」ブランドのTシャツやタオルなど、銭湯愛が表現されたアパレルやグッズも販売されている。
カフェスペース
セントウボウズさんとコラボしたアパレルの販売もある。
充実したキッズスペースも完備されており、家族連れでも安心して過ごせる空間づくりがなされている。
その他にも、浴室に持ち込める貸出用のおもちゃ、子ども専用のポイントカード、くじ引き、駄菓子と子どもたちが喜びそうなしかけが勢揃い。これは子どもがリピートしたくなるわけだ。
待合室のキッズスペース
子ども用の貸し出しおもちゃはファミリー層には嬉しい。
4つの浴槽と能登海洋深層水の恵み。日替わり薬湯で毎日新鮮な体験
階段を上り2階へ。浴場に入ると、清潔で広々とした洗い場と4つの個性豊かな浴槽が迎えてくれる。床もピカピカで何とも気持ちが良い。話によると毎日の掃除がかなり徹底されているという。壁面には富士山ではなく、白樺をモチーフにしたタイルアートが美しく施され、銭湯でありながらアート作品としても楽しめる空間となっている。洗い場にはシャンプーやボディソープは設置されていないため、持参するか、売店で購入する必要がある。しっかり身体を洗ったら、さっそく湯船へ。
白樺のアートタイルが映える気持ちのいい浴室(男湯)(写真提供:pocapoca 諸江の湯)
浴室内は毎日の清掃でピカピカに磨き上げられている。
「諸江の湯」は4つの異なる特徴を持つ浴槽。左手から、水風呂・薬湯・浅湯(ジェットバス)・深湯である。特に日替わり薬湯は毎日内容が変わり、ゆずや果物風呂、金沢大学教授監修のコーヒー風呂など、他では味わえない本格的な薬湯が楽しめる。この日訪れた際はジャスミンの香湯。爽やかな香りに心も身体も緩む。
向かって左より、水風呂・薬湯・浅湯(ジェットバス)・深湯(写真提供:pocapoca 諸江の湯)
そしてこの「諸江の湯」最大の特徴は、深さ200m以上の深海から汲み上げた能登海洋深層水を使用していること。この海洋深層水はミネラルを豊富に含み、赤ちゃんの羊水に最も近いミネラルバランスとなっているという。日本海固有水として、大海へ出て行かない特別な水質を持つ。やわらかな肌触りで体がポカポカに温まり、「肌がつるつるになる」と利用者から高い評価を得ている。肩まで浸かれる深めの浴槽は適度な水圧もあり、血行促進効果も期待できる。
身体が温まる能登海洋深層水
地域愛に包まれるコンパクトサウナで集中、優しい水風呂でととのう。
サウナは脱衣所に併設されている。定員2名程度のコンパクトな造りながら、METOS社のサウナストーンを使用したストーブを採用した本格仕様。温度は約90℃に設定されており、十分な熱さだ。明るさも照度をあえて落としてあり、山小屋のような雰囲気で、自分とゆっくり向き合える。(必要があれば照明は自分で消してもいいらしい)
サウナ室の壁には地元の常連さんたちの手書きメッセージやイラストが描かれており、まさに地域コミュニティの結束を象徴する空間となっている。この筆跡を眺めながらのサウナタイムは、他の施設では決して味わえない特別な体験だ。
コンパクトな室内は山小屋のよう
サウナで十分に発汗した後は、浴場に戻り、汗をシャワーで流して、水風呂へ。18℃の水温(汲み上げ地下水は約15℃)は初心者にも優しく、サウナ上級者にとっても程よいクールダウンを提供してくれる。肩までしっかりと浸かれる深さも嬉しい。水風呂は地下水を使用しているため、一般的な水道水とは異なるやわらかな肌触りを楽しめる。
水風呂(18℃設定)
ととのいスペースは脱衣所にテレビを見ながらボーッとできる椅子が2つ設置されており、サウナと水風呂を繰り返した後のふわふわとした感覚を存分に味わうことができる。サウナは営業時間内はいつでも利用できるため、朝風呂でサウナを楽しめるのも「諸江の湯」ならではの魅力だ。
この日は調子が良く、3セットでポカポカにととのった。
ととのい椅子は男女とも脱衣所に2脚・浴室に2脚。
湯上がりの楽しみ。体が喜ぶ名物アイス
ここ「諸江の湯」での湯上がりの最大の楽しみといえば、名物「pocapoca ice pop(ポカポカアイスポップ)」。人工甘味料、合成着色料を一切使用しない完全無添加のアイスポップで、石川県産の新鮮な果物や野菜をたっぷりと使用している。
pocapoca ice pop(写真提供:pocapoca諸江の湯)
pocapoca ice popはカラフルなフルーツや野菜をまるごと使用した、見た目にも楽しく、食べて美味しい、体のことを考えたアイスポップ。「諸江の湯」独自の非加熱殺菌により、新鮮な野菜と果物の栄養素をキープし、原材料がもつ本来の風味を大切にしている。家族みんなの健康に、大切な人への贈り物に、自分へのごほうびにもよさそうだ。
カロリーも控えめで、素材の味を活かしたさっぱりとした後味が自慢。フルーツミックス、グリーン&フルーツ、グレープフルーツ&オレンジ、キウイinヨーグルト、オレンジinヨーグルト、キウイフルーツ&オレンジ、能登ブルーベリー&オレンジ、加賀棒茶&能登大納言羊羹など、多彩なバリエーションを展開している。
※バリエーションは2025年7月現在。
●pocapoca ice pop グレープフルーツ&オレンジ 550円(税込)
御託を並べたが、ひとくち口に入れれば「うまっ!」とシンプルな表現に凝縮される。
湯上がりの火照った体に優しく染みわたるpocapoca ice popは、大人の女性向けに開発された1品だそうだが、男性である私にもズバリ刺さっている。金沢かがやきブランドにも認定されており、品質の高さは折り紙付きだ。価格は550円(税込)と少し贅沢だが、その価値は十分にある逸品として、多くの入浴客に愛され続けている。
ハンモックで揺られながら、子どもがキッズスペースで絵本を読んでいるのを眺める。
「なんて良い日だ。帰るのやめようかな。」なんてことを想いながら、重い腰をあげ、帰路につく。今日はアイスを食べて満足したから、家でのビールは我慢できそうだ。
「pocapoca 諸江の湯」のカナメ|インタビュー
お店の実質的運営を任されている、松永 紗妃子(まつなが さきこ)さんと中川千怜(なかがわちさと)さん姉妹に、「pocapoca 諸江の湯」のカナメ(要)について話を聞いてみた。
松永 紗妃子さん(左)・中川千怜さん(右)
創業ルーツは100年を遡る
「諸江の湯」のルーツは、実は100年以上前に遡る。現在代表を務める2人の父、松永日出男(まつなが ひでお)さんの実家は芳斉町にあった「日の出湯」。その系譜を受け継ぎ、1982年に諸江の地で日出男さんが「諸江の湯」を開いた。
さらに、世の中でコンビニエンスストアが流行り出した数十年前、うちも24時間やってみよう!というふとした提案から今も続く6時から24時までのロング営業スタイルが始まったという。
銭湯イノベーション

実はうち、温泉ではないんです。金沢市内の銭湯は温泉も多いのですが、うちは違います。だからうちでは他がやっていないことを強みにしたいと思い、15年ほど前に現社長が『能登海洋深層水』を導入しました。効能としては保温、保湿はもちろんですが、殺菌作用などもあります。実際にアトピーなどをお持ちの方が、うちのお湯に入って良くなった!というような話もあります。能登の業者さんから月に900ℓほど仕入れています。そのままでは塩分濃度が高すぎるので入浴剤のような形で地下水を沸かしたお湯と混ぜて使っています。父の性格もありますが、何もないところから始まったからこそ、何でもやってみよう!という気質がありますね。

その他にも、薬湯は四季に合わせ5~6種類くらいをその月毎に毎日変えています。毎日変えるのは大変ですが、毎日来られる常連さんたちがいますし、自分たちも楽しめています。中でも特徴的な薬湯『プラセンタコーヒー風呂』です。コーヒー博士こと、金沢大学の廣瀬幸雄(ひろせ ゆきお)名誉教授が、プラセンタというコーヒー豆を風呂に合うように焙煎してくれたんです。安眠効果や美容にもいいんです。本当にコーヒーに浸かっているような感じですよ。最近は豆の値上がりもあり、月に1回の開催ですが、ぜひこの高級感を味わいに来て欲しいです。
千怜さんが来ているTシャツにふと目をやる。浴室のタイルに描かれているアート作品だ。めっちゃカッコいい。

昨年の夏ごろに、関西で開催された『銭湯会議』という集まりでセントウボウズというクリエイティブチームから声をかけられ、一緒にTシャツを作ることになりました。石川県ではコラボをしているところが無かったので、1番ならやってみたい!と話を進めることとなりました。県外に飛び出していくと若い銭湯経営者とも交流ができて、新しい情報も入ってきます。そのたびに諸江の湯ではどう活かせるか?と考え、どんどん試してみています。
これは、もはや銭湯イノベーションである。何もなかったからこそ、挑戦し、独自の価値を生み出し続けている。
もったいないから生まれた、身体がよろこぶアイス
更に銭湯イノベーションの話は続く。

pocapoca icepop(ポカポカ アイスポップ)の件でも、多くの方に喜んでいただいています。元々は系列店の御経塚の湯で青果の販売もしていました。ただ、すべてその日のうちに売り切ることが難しいこともあり、どうしたらいいのかな?と考えた時に、当時流行していたグリーンスムージーに目を付けました。店舗の一部を改装してカフェのような形にして販売を始めました。ただ、それでも生ものを扱うことには変わりなくて、どうしてもロスが出てしまいます。「だったら冷凍して固めよう!お風呂屋さんなんやし、アイスいいじゃん!」というような勢いでスタートをしました。そこからは思いがけず本格的なアイス作りが始まり、気が付けば金沢かがやきブランドにも認定されました。

本当に多くの方に愛されているのですが、今は生産量を少し押さえています。丹精込めて全て手作りをしているので、どうしても手間ひまがかかります。健康で過ごしてもらうことをサービスとして提供しているのに、自分たちが健康じゃなくなるのも違うな、と思いまして。今は小矢部のサービスエリアとギフト金沢さん、当グループ2店とECサイトで販売しています。
未来への投資
これから先の理想の「pocapoca 諸江の湯」はありますか?と尋ねると、2人は楽しそうに未来を語ってくれた。

完成形はありません。日々挑戦して、変化を続けるだけです。今までもそうやってきましたし、これからも一緒です。日々進化なんです。これまでの経験でいうと、私たち自身のライフステージが変わるごとに、サービスをアップデートしてきました。

私たち自身が女性だったこともあり、まずは女性も来やすい銭湯を目指しました。それから出産をして親になったことで、家族で来やすい銭湯。そして今は子ども、若者たちが来やすい銭湯を目指しています。 実は最近の若い人たちの中には、裸になって銭湯に入ることをためらう人たちもいます。それはきっと銭湯に入る経験を小さな頃に体験できていないことも1つの要因だと思っています。

銭湯をこれからも長く続けていこうと思うと、未来のお客さんは若者であり、子どもたちなんです。家族連れや若者たちが来やすい場所にするということは『未来への投資』なんです。

「産後にゆっくりお風呂に入りたいのには入れなかった」きっとこの想いは自分だけじゃないはず。子どもたちが楽しめる銭湯なら、親もゆっくりできるはずだと思いました。
キッズスペースを設ける。お風呂用のおもちゃセットを用意する。子ども用のポイントカードを用意する。くじ引きができる。ハンモックを設置する。自分が経験してきたライフステージがあるからこそ、どんなことがあったら親も子も嬉しいかが想像できます。

こうやって少しずつ、いい思い出を重ねていくことで、未来へ銭湯文化を紡いでいくことが出来ると思うんです。だからこそ、若い世代に「銭湯」が気持ちいい。いい場所だ。と思ってもらえるために日々進化していますし、これからも同じです。
「pocapoca 諸江の湯」は、身体も心もポカポカにしてくれる。それはこの深い愛情から来るものだろう。
2025年8月~11月上旬の3か月は、能登半島地震で影響を受けた浴室の修繕や、1階部分のカフェスペースを充実させるためにお休みとなる。
この間にもきっと、お客様に愛される銭湯イノベーションが起こり、新しい「pocapoca 諸江の湯」に出会えるはずだ。
「pocapoca 諸江の湯」施設情報
【利用料金】
・大人(12歳以上):500円
・高校生・大学生・専門学校生・中学生:300円(学生証提示)
・小学生(7〜12歳):150円
・幼児(6歳以下):70円
・ふれあい入浴:160円(金沢市ふれあい入浴補助券をお持ちの65歳以上の方)
※サウナ利用料金無料
※プレパス提示で小学生以下は平時無料。
【設備】
・浴場:男湯・女湯ともに3つ(夏場42.3℃)冬場43.0℃
・洗い場:シャンプー・ボディソープなし 男湯28席・女湯28席
・ドライサウナ:88~90℃(男女ともに)
・水風呂:18℃(地下水:15℃)
・ドライヤー(有料)
INFORMATION
店名:
pocapoca 諸江の湯(ユーアンドゆグループ)
住所:
石川県金沢市 諸江町中丁 180-3
(駐車場48台)
電話番号:
076-231-6815
営業時間:
火~木・土・日 6:00~24:00
月・金 10:00~24:00
定休日:
不定休(Instagram等で発信)
一人当たりの予算:
~1,000円
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