石引|「石引温泉 亀の湯」で、しっとりととのう。〜湯るっと、かなざわ。銭湯めぐり。vol.7

石引|「石引温泉 亀の湯」で、しっとりととのう。〜湯るっと、かなざわ。銭湯めぐり。vol.7

兼六園から東南に広がる小立野台地。その坂道の途中に、地元の人々に「がめのゆ」と親しまれる天然温泉の銭湯がある。透明度の高い濃い琥珀色をした源泉が自慢の「石引温泉 亀の湯」。白く縦に長い4階建ての建物に、1階と3階の2つの入口を持つユニークな造り。ツルツル・トロトロの温泉と蒸気サウナ、源泉かけ流しのぬる湯を楽しめる外湯。心も体もしっとりとととのう時間が待っている。

琥珀色のツルツル温泉と蒸気に包まれる。「石引温泉 亀の湯」で、じっくりととのう。

亀坂(がめざか)にある銭湯へ

「亀の湯」は1949年創業。亀坂にあるお風呂屋さんとして、ご近所の人々を始め、金沢大学や金沢美術工芸大学の学生さん達に長く親しまれてきた。作家の五木寛之氏も金沢在住の折、すぐ近くにお住まいになっていたので、毎日のように通い、「浅の川暮色」などのエッセイや、金沢百景を始めとするテレビ番組で紹介している。

1985年、小立野通りと犀川大通りを結ぶ道路計画のため、元の場所(石引2丁目10番地)から、現在の場所(石引2丁目15番地)に100m程移動した。その際、3月から温泉を掘削し、7月に地下600mで湯脈にたどり着いた。「亀の湯」という名称は広く親しまれてきたので残し、「石引温泉 亀の湯」と名称を変更して温泉利用の公衆浴場として生まれ変わった。常連客の間では今でも「がめのゆ」や「ガメユ」と呼ばれている。

建物は斜面に建っているため、入口は笠舞口(1階)と小立野口(3階直通)の2か所ある。笠舞口からはエレベーターで上がることができる。

笠舞側入り口

小立野側入り口

駐車場は白山坂交差点を挟んで両側にあり、約30台駐車できる。

公共交通機関なら、北陸鉄道バスの小立野停留所(3階小立野側入口)または石引二丁目停留所(1階笠舞側入口)下車徒歩2分だ。

 

昔ながらの番台スタイルと天井が高く広々とした脱衣所

入ってすぐに銭湯ならではの温かい空気に包まれる。

広々としたロビーからは絶景が広がる。

4階建ての建物の3階が浴場。受付も3階だ。券売機で入浴券を購入し、番台で受け付けをする。

入浴料金は石川県の公衆浴場の公定料金で、中学生以上500円、小学生150円、未入学児70円。学生は学生証を提示すれば300円で入浴できる。金沢市内在住の65歳以上の方は、金沢市の「ふれあい入浴補助券」を使用して160円で入浴できる。「かなざわ子育てすまいるクーポン」を利用すると、大人1名+幼児1名が無料だ。毎週日曜日は、小学生と未入学児は無料になっている。

番台は昔ながらの番台スタイル。

暖簾をくぐると、天井が高いからなのか、抜け感があり明るく、とても広く感じる。実際に広い。
ロッカーは昔ながらの鍵付きスタイル。ロッカーの中に籠があるのも嬉しい。
体重計と木製の身長計がある。子ども達が嬉しそうに使っている。

脱衣所(男湯)

浴室との境目は大きなガラスで仕切られている。

女湯側には、化粧室やベビーベッドも設置されており、幅広い層のニーズに応えている。

 

琥珀色の天然温泉と粋な蒸気サウナ

いざ浴室へ。脱衣所同様に天井が高く、開放感がある。

浴室(男湯)

壁は白のタイル。床は少し茶色がかかったタイル。どちらも歴史を感じるが、清掃が行き届いており、とても清潔感がある。

洗い場の隣には全身用のシャワーもあり、まずはこれを浴びる。次に洗い場で洗身する。シャワーの水圧もしっかりありGOOD。備え付けのシャンプーやせっけんはないので持参が必要。番台でも購入可能だ。

全身用のシャワー

洗い場は21席(男女湯共に)

お風呂は内湯3つ(繋がっている)と外湯が1つ。
泉質は、透明度の高い濃い琥珀色のナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉で、ツルツル・トロトロの感覚。光の角度によってはアメジストのような色にも見える。

内湯は41℃(男湯)

内湯は正面から見て、右が深い湯、真ん中が寝そべって入ることができる浅めの気泡湯。左は腰くらいまでの深さで、腰掛ができるバイブラ湯である。どこも湯船の中に段差があるからちょっと注意がいる。

温度は熱交換機で41℃に加温して、濾過循環させている。温泉の成分が変化しないように注意を払い、温泉にお湯を加えて薄めたりしていないという。

源泉かけ流しのぬる湯外湯
外湯は浅めでコンパクトな半露天風呂。大人が4名くらいは入れる感じ。天井はサンルームのようなガラス張りになっている。

 源泉は37℃。加温前の源泉掛け流し。ぬるめのツルツルしたお湯が体に優しい。湯船の縁に頭をゆだねてリラックス。寝てしまいそう。となりのおじさまは寝ていた。熱すぎないので、子どもともゆっくり入れる。

じっくり温泉につかって汗をたっぷりかくと、美肌になり、ストレス発散に効果的。また、怪我や肩こりのほか、アトピーや火傷などの皮膚病にも良いと評判だ。

外湯は加温・加水なしの源泉かけ流し、純温泉(男湯)

外湯(女湯)

粋な「蒸気サウナ」
体をお湯で緩めた後にサウナに向かう。
入り口にはスチームサウナではなく「蒸気サウナ」と記してある。粋な感じがたまらない。

温度は40℃と、じっくり入るにはいい温度。この日は水蒸気を感じながら20分。じんわり汗をかく。サウナを出たら、となりには冷水専用のシャワースペースがある。ここで汗を流してから、水風呂へ。

水風呂と温冷交互浴
水風呂は地下水をくみ上げ、冷たすぎない18〜20℃設定。蒸気サウナとの相性も良い。

外湯で体を休めて、改めて最後に温湯に入る。温冷交互浴で完全に湯るっと、ととのう。

身体を良く拭いて、着替えをする。脱衣所には椅子もあるから、ご高齢の方も使いやすそう。
ドライヤーは有料のものが2つ。

 

ロビーからの絶景がたまらない

着替えを済ませ暖簾をくぐると、目の前には絶景。
3階のロビーの窓からは、犀川流域の家並みや周辺の山々を一望できる。とても気持ちが良くついつい景色に見とれて長居してしまう。

 

「石引温泉 亀の湯」のカナメ|インタビュー

現在の経営者・山田芳宗(やまだ よしむね)さんに、この「石引温泉 亀の湯」のカナメ(要)についてお話を伺った。

父が始めた銭湯、3代で守ってきた場所
「石引温泉 亀の湯」は、山田さんの父・芳(かおる)さんが創業した。芳さんは戦後、満州から引き上げてきた。母方の実家が金沢市内で銭湯を営んでいたこともあり、地元・大桑出身の芳さんはこの石引の地で銭湯を始めることを決めた。

「この辺は昔、繁華街だったんですよ。片町に繁華街が移る前は、ここの石引が宿場町だった。金沢城の中に旧制四高があって、向かいに工専があって、この辺一帯が学生街でした。映画館もパチンコ屋もあって、商店街がずーっと並んでいた。学生さんはアパートがあまりなくて、みんな下宿で暮らしていたから、すごい人だったんですよ」

 当時の石引は宿場町であり、繫華街としても栄えていた。路面電車も通っていた。

当時経営していた銭湯を改装し、その後も何年もかけて育ててきた。山田家は最盛期には3軒の銭湯を経営していた。「亀の湯」「鶴の湯」そして「芳泉湯」。亀の湯の名前は、「亀坂」に「鶴の湯」は旧地名「鶴間町」に由来する。

 

移転と温泉掘削
1985年、道路建設計画のため、元の場所から100m移動することになった。その際、3月から温泉の掘削を開始。7月に地下600mで湯脈にたどり着いた。

「この建物は4階建てで、2階と4階は元々休憩室として作った。2階の大広間と、4階には個室を4つ。でも、お客さんも浴場まで上り下りするのが面倒くさいと言って、あまり使われなかった」と笑う。

大広間は、コロナ前には21世紀美術館の関連イベントや、町内の集まり、金沢美大の学生の作品展示などに貸し出していた。現在は、貸し出しは中止しており、小立野小学校の社会科見学の際に使用しているそうだ。


昔ながらのこだわりを守る
山田さんは北陸大学薬学部の教授を務めていた。退職後、正式に経営を引き継いだのは今年だ。

「私のこだわりで、温度は昔のままでやっているんです。内湯は41℃。昔は42℃以上にすると雑菌がほとんど死滅するので、42℃が基準温度だったんですけど、今はみんなぬるいのが好きなので、温度を低くし、レジオネラ対策で塩素濃度を高くしているところが多いです。でも、塩素濃度が高いと皮膚の弱い方には体に害があると思うので、昔のままお湯の温度を高くして塩素濃度はできるだけ低くしています」

そして何より大切にしているのが、毎日の湯替えだ。
「昔から毎日お湯を全部抜いて入れ替えているんです。法令上は1週間に1回ぐらい替えればいいんですよ。でも、お湯の温度が下がると急激に雑菌が繁殖するので、その代わり塩素を大量に入れないといけない。皮膚の弱い方には適さないと考えるので、うちは塩素も一応入れていますが、最低限しか入れていません。また、お湯を浴槽から溢れさせて汚れを取り除いています。そういうのが良くて来てくれる常連さんが何人かいるんです」

大切にしている温泉の成分を変えないための工夫もある。
「源泉を熱交換器で加温するだけで、水を加えて薄めたりしていません。温泉の成分はそのまま。ただ温度を上げただけ。加水なしでやっています」

お湯と絶景
外湯の源泉は36.5℃。人肌に近い絶妙な温度だ。
「普通に寝ていられる、ちょうどいい状態なんです。寝ている人もいますよ。男の人は。女の人はずっと喋っていますけどね。他の温泉で源泉かけ流しのところもあるけど、温度が高いとこんなことはできないし、低いとぬるいと言われる。この温度で出てくるのは珍しいといえば珍しいですね。浴槽をもっとでっかくすれば、なおさらみんなに喜ばれるんでしょうけど」

そしてもう1つの自慢が、3階ロビーから見える景色だ。
「向こう側の山の麓に見えているのが寺町あたり。景色がいいということが、ここの特徴ですね」と山田さんは微笑む。

昔から変わらない毎日の湯替え。加水しない温泉。人肌の温度の源泉かけ流し。高台から見える絶景。そして地元の人々が集う場所。

「石引温泉 亀の湯」は、お湯へのこだわりと、地域に寄り添う温かさを持ち続けている。作家の五木寛之氏が毎日のように通った銭湯。金沢大学や金沢美大の学生たちが親しんだ銭湯。そして今も、地元の方から「ガメユ」の愛称で愛され続ける銭湯。

この場所が続く限り、琥珀色のお湯と絶景が、訪れる人々を迎え続けるだろう。日常の疲れを癒したいときに、ふらりと訪れてみてほしい。

 

「石引温泉 亀の湯」施設情報

【利用料金】
・大人(12歳以上):500円
・高校生・大学生・専門学校生・中学生:300円(学生証提示)
・小学生(7〜12歳):150円
・幼児(6歳以下):70円・ふれあい入浴(金沢市内在住65歳以上・補助券利用):160円
・かなざわ子育てすまいるクーポン利用:大人1名+幼児1名無料
・毎週日曜日:小学生・未入学児無料
 ※サウナ利用料金無料

 

【設備】
・浴場:男湯・女湯ともに内湯:3つ(41℃に加温・濾過循環)外湯:1つ (源泉37℃かけ流し)
・蒸気サウナ 40℃(男女ともに)
・水風呂 18~20℃(地下水18℃)
・洗い場(全身用シャワーあり。シャンプー・ボディソープは持参または番台で購入)

INFORMATION

店名:

石引温泉 亀の湯

住所:

石川県金沢市石引2丁目15-31
(駐車場約30台)

電話番号:

076-262-4126

営業時間:

12:30〜24:00

定休日:

毎月第1・第3金曜日(変更の場合あり・要確認)

一人当たりの予算:

〜¥1,000

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