
湯るっと、かなざわ。銭湯めぐり。

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暁町|「兼六温泉」で優しさと熱さを味わう。〜湯るっと、かなざわ。銭湯めぐり。vol.4
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兼六園から徒歩圏内にある暁町。住宅が立ち並ぶ中に、昔ながらの銭湯を味わえる場所がある。
失われつつある風景を思い出させてくれる「兼六温泉」だ。
入店した瞬間から懐かしさを感じるこの銭湯。ここは身体も心も温まる場所だった。
目次
昔ながらのザ・銭湯で、ゆるっと。「兼六温泉」で身体も心もポカポカに。
外観は一見銭湯には見えないが中に入ると昔ながらのザ・銭湯
昔ながらの雰囲気を味わえる銭湯「兼六温泉」へ
細道を入った場所にある駐車場に車を停め、入口に向かう。外装は一見銭湯ではないようにも思えるが、長い煙突が銭湯である証だ。入り口では石像がお出迎えをしてくれている。開店と同時にぞろぞろ人が入っていく。これが「兼六温泉」の日常なのか。
入口裏の駐車場には祠がある
石像がお出迎え
入店すると、すぐ右に憩いのスペースが見える。男湯のドアを開けると、そこには今ではなかなか見ることがない昔ながらの番台。番台自体は昔からあり、改装するタイミングがなく残ったままになっているらしい。抵抗を感じて帰られる利用者もいるものの、利用者になにかあった際に対応しやすいというメリットもあるとのこと。
憩いスペース
下駄箱
男湯はこちらから
女湯はこちらから
番台
番台で支払いを済ませる。現金以外にも楽天ペイやau PAY、メルペイ、d払いでも支払い可能だ。
優しさあふれる脱衣所
脱衣所に入るとまず感じるのは、その広さだ。これだけのスペースがある銭湯はなかなかない。ロッカー周りの棚にはお風呂セットが置かれている。近所の常連さんが置いていると思いきや、たまに来る利用者の分もあるらしい。
置かれたお風呂セットの数を見ると「自由に置きすぎなのではないか」とも思うが、これは店主の優しさから生まれた光景なのだろう。
原則シャンプーやボディソープは持参が必要となっている。忘れた場合は、店頭でも購入できる。ただし、貸し出し用のシャンプーやボディソープもあり、一声かければ貸し出してくれるらしい。ちなみに私が訪問したときは「これ使う?」と聞いてくれた。さすがに優しすぎではないだろうか。
脱衣所のロッカーを見ると、番号が連番ではない。古いタイプのロッカーのため、壊れたら在庫を取り寄せるためらしい。なぜか男湯のロッカーばかり壊れるとのこと。他の銭湯でも似たような話を聞いた。男性を代表して謝りたい。
広い脱衣所
利用者のお風呂セットが置いてある
置きすぎなのではと思うほどのお風呂セット
ザ・銭湯の洗い場
浴室に入ると、まさにザ・銭湯だ。昔ながらのシャワーヘッドにケロリン桶。銭湯好きにはたまらない。壁に飾られている風景写真は利用者から提供されたものらしい。店主だけでなく利用者も優しい。
浴室(男湯)サウナ室はコンパクト
浴室(女湯)
ザ・銭湯のシャワーヘッド
銭湯のたしなみとして、まずは身体を清める。男湯女湯ともにシャワーヘッドは10個のため、混雑時は譲り合いの気持ちを持ちたい。
オンリーワンの熱湯サウナ
身体を清め、水気を拭いたらサウナへ。営業時間は14時からとなっているが、サウナ室は16時半ごろから利用開始となっている。サウナ目的で訪れる方は注意が必要だ。
男湯のみに設置されているサウナは、県内で1番熱いという噂がある。その理由はサウナの仕組みだ。熱湯の蒸気でサウナ室を温める「熱湯サウナ」。常にロウリュしている状態といえば伝わるだろうか。
スチームサウナと紹介されている場合もあるが、あくまでも熱湯であるため、スチームサウナではない。これは声を大にして伝えたい。
「スチームサウナではない」
温度は60℃と聞いており、外観もコンパクトなため、正直油断していた。サウナ室に入って最初に感じたのは強烈な熱気。これはロウリュの熱気と同じだ。立っていたら息をするのも苦しい。なぜか目も細める。これは決して大げさではない。
ここで理科で習った「熱い空気は上に行く」という話を思い出す。少ししゃがんだら熱さがおさまった。中川先生ありがとう。息苦しくなる境目は150cmくらいだろうか。初めて入る方はくれぐれも覚悟を持って入ってほしい。
座ってようやく口で息ができた。鼻呼吸なんてもってのほかだ。湿度による体感での熱さは他のサウナでの120℃を優に超える。温度が60℃とは、とても信じられない。県内1位どころか過去1といっても過言ではない熱さだ。
熱さでナンバーワンになったうえ、熱湯サウナ自体が元々特別なオンリーワン。世界に一つだけの花を超えたサウナがここにあった。
サウナ内装(60℃)
熱湯設備
水風呂がないため、サウナ横のシャワーで身体を冷やす。冷たい水を求めるのであれば洗い場の水を使うのがおすすめ。水が他の利用者にかからないよう、周囲に気をつかうことも忘れてはいけない。
源泉かけ流しの湯船
サウナを楽しんだら湯船を味わう。金沢市に多いモール泉の温泉で、源泉かけ流し。源泉は37~39℃となっているが、ボイラーで42℃程度に温めているとのこと。しっかり温まれる温度のため、疲れを吹き飛ばしてくれる。
お湯は毎日入れ替えているとのこと。衛生面の問題もあるが、なにより「新しいお湯を毎日提供したい」という想いがあるためらしい。ここでも優しさを発見。
男湯の浴槽はシンプルに源泉をアピール
女湯の浴槽は日当たりも良い
憩いの場となる露天風呂
「兼六温泉」の特徴ともいえるのが露天風呂だ。屋根がないため日中の明るさは抜群。緑もあり景観もたまらない。設置されている長い竹からお湯が出ている。お湯が温泉に落ちる音が心地良い。
露天風呂は加温なしの源泉かけ流しとなっているが、利用者が加温できるようになっている。ここにも優しさが置いてある。
露天風呂(男湯)
女湯の露天風呂は脱衣所を経由して入る
特に地元住民が多い日中は、露天風呂で団らんする様子が日常となっているとのこと。コミュニティの役割も果たしているのだ。
ただし、体調が悪い状態で露天風呂に長時間浸かることは避けよう。以前そのような人がおり、救急車を呼んだこともあるとのこと。くれぐれも体調には気をつけて利用したい。
しっかり温まったあとは、シャワーを浴びて脱衣場へ。暑くなる季節は水を浴びるのもおすすめだ。ドライヤーは無料で使用できる。10円を入れると動くタイプのマッサージチェアもある。
ちなみにこのマッサージチェア、お金を入れなくても動くらしい。公認の裏技。
お金を入れなくても動くマッサージチェア
女湯にはドライヤーチェアがある
脱衣所で飲み物を購入し、憩いのスペースへ。瓶コーラが私を呼んでいる気もしたが、懐かしの缶ポカリスエットを選択する。格好つけて一気に飲み干そうと思ったが、思ったより量が多く断念した。
冷蔵庫
外に出る頃には満足感でいっぱいになっている。懐かしさを感じたまま、ゆるゆると帰路につく。
「兼六温泉」のカナメ|インタビュー
経営者である田村伊織(たむらいおり)さんに「兼六温泉」の歴史や大切にしている想い、カナメ(要)について話を聞いた。
「兼六温泉」の歴史
「兼六温泉」は、昭和34年(西暦1959年)頃に1代目である田村さんのお父さんが開業し、75年にわたって地域の人々の生活に根付いてきた。元々は「あやめ湯」という名前であったらしい。
「昭和60年に温泉を掘り当てたため、店名に『温泉』をつける必要がありました。元々、近くに『兼六湯』という銭湯があったのですが、ちょうど少し前に閉業したため『兼六』の名前が空いていたんですよね。そのため『兼六温泉』と名付けました」
経営者の田村さん
さまざまな利用者との交流
ザ・銭湯である「兼六温泉」だが、利用者は地元住民だけではない。
「近所の人だけでなく、バスや車で遠方から来る人もいます。兼六園が近いこともあり、観光客も来ますね。最近は外国人の利用者も増えてきました」
外国人利用者は文化の違いもあり、注意書きなどで使い方を伝える必要があるという。対応は大変かと思いきや、意外な答えが返ってきた。
「英語を使えない人が来る場合もあり、その人は注意書きを読めません。でもなんとなく話せば通じるんですよね」
この話からも、田村さんの人柄がうかがえる。
コミュニティスペースとしての役割を果たす「兼六温泉」
いつでも自然体の田村さんには良い意味で欲がない。今後、なにかのイベントを開催する予定もないとのこと。しかし、地域のコミュニティの場として「兼六温泉」を利用してほしいという想いは持っている。これが「兼六温泉」のカナメだ。
「この辺では年配の方が増えてきました。そういう方たちにとって孤独は辛いと思うんです。長居しても構いません。『兼六温泉』を、孤独を解消したり発散したりできる場所として利用してもらえればと思います」
田村さんの銭湯への想いを受け「兼六温泉」は人々の優しさをゆるやかにつなぐ憩いの場所として残り続ける。
「兼六温泉」施設情報
【利用料金】
・大人(高校生以上):500円
・中学生〜専門学生・大学生(13〜22歳):300円
・小学生(7〜12歳):130円
・幼児(6歳以下):50円
・ふれあい入浴:160円(金沢市ふれあい入浴補助券をお持ちの65歳以上の方)
※サウナ利用料金無料
【設備】
・浴場:男湯2つ・女湯2つ(42℃)
・露天風呂
・洗い場:シャンプー・ボディソープなし 男湯10席・女湯10席
・熱湯サウナ(男湯のみ):60℃
・水風呂:なし
・ドライヤー
INFORMATION
店名:
兼六温泉
住所:
石川県金沢市暁町18-36
(駐車場12台)
電話番号:
076-221-2587
営業時間:
14:00〜22:30(日曜・祝日のみ13:00〜22:30)
定休日:
金曜日
一人当たりの予算:
〜1,000円
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