
【Relation】石川県の中小企業経営者インタビュー vol.26|食品スーパー ぴゅあロフティ「有限会社スーパーロフティ」上野真人氏
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【Relation】石川県の中小企業経営者インタビュー vol.26|食品スーパー ぴゅあロフティ「有限会社スーパーロフティ」上野真人氏
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七尾市で3代にわたり続く地域密着型スーパーマーケット「ぴゅあロフティ」(以下ロフティ)。
能登でとれた美味しい食材を地元で消費する場として、地元の方だけでなく市外や観光客からも支持されています。
今回は代表取締役の上野真人(うえの・まさと)氏にお話を伺いました。
地産地消でライフラインを守る
野外市から始まった販売が愛され続けるスーパーに
─まずは創業の背景と上野社長の経歴を教えてください。
1947年頃、戦後の混乱期に祖父が旧田鶴浜町(現在七尾市)で商売を始めたのが、ロフティの原点です。最初はダンボールの上に食品を並べるような、いわば“闇市”のようなスタイルだったと聞いています。
その後、自宅の一部を改装して正式に店舗を構え、地元の人々に親しまれる商店としてスタートしました。1985年には個人商店から法人へと転換し、地域に根ざしたスーパーマーケットとして新たな一歩を踏み出しました。
その後も自宅を改装しながら営業を続け、2000年に現在の店舗を七尾の地にオープンし、今年で25年を迎えます。
幼少期は、土日も働く両親の姿を見て育ったため、家業にはあまり良い印象を持っていませんでした。友人を家に呼ぶのもためらわれましたし、旅行にもなかなか行けなかった。だから「自分はサラリーマンになる」と思っていたんです。
ですが長男という立場もあって、商業経営を学ぶため短期大学に進学。その後は県内スーパーマーケットで5年間、修行のつもりで勤務し、家業に戻ってきました。
─なぜ戻る決意をされたのでしょう。
幼い頃から「長男だから後を継ぐんだ」と周囲に言われてきたので、無意識のうちにその責任感が心のどこかにあったんだと思います。全く別の仕事をして、親の悲しい顔は見たくないという気持ちも強かったですね。
実際、父も私が戻りやすいように今の店舗を構えてくれていましたし、覚悟を決めて戻ることにしました。その後20年ほど現場で働き、2019年に社長に就任して6年が経ちます。
─社長になってから変化したことはありますか。
人間関係ですね。社員と向き合う難しさを日々感じています。
以前は「お客様第一」の考え方でしたが、今は「社員あってのお客様」という考えに変わってきました。社員が安心して、楽しく働ける職場をつくることが、結果的にお客様の満足につながると考えています。
地元に根づくスーパーとして
─ロフティは地域密着型スーパーと拝見しました。
うちは「地元でとれたものを、地元で食べてもらう」ことを何より大事にしています。
近年では、ドラッグストアでも手軽に生鮮食品が手に入るようになり、便利さや価格の面で選ばれることが増えたことで、生鮮食品を主力とするスーパーが少なくなってきました。
そんな中、ロフティでは地元市場で朝仕入れたばかりの魚や野菜を店頭に並べ、鮮度や品質に徹底的にこだわっています。
パッケージを突き破るほど活きのいい魚
また、大手スーパーではなかなかできない手作りの惣菜にも力を入れています。たとえば、40年近く続いているホルモンやうなぎのタレは、現在95歳になる祖母が、変わらぬ味を守って手作りしてくれています。
こうした 「ここでしか買えないもの」 があるのが、ロフティの大きな魅力だと思います。
能越自動車道のインターチェンジのすぐ近くに位置していることもあり、金沢市内からのお客様や、和倉温泉に泊まった観光客の方々にも能登の食材をお土産としてご利用いただいています。
─七尾市ですと昨年1月の能登半島地震では、大きな被害もあったのではないでしょうか。
自宅や店舗の周辺はかなりの被害を受けました。店の建物自体には大きな損傷はなかったものの、店内はガラスや商品が床に散乱し、事務所の棚も倒れてとても営業できる状態ではありませんでした。
それでも、1月2日が営業開始日だったので、社員に連絡を取ったところ、7名ほどが出勤してくれました。午前中は全員で必死に清掃作業をしました。
周辺の店舗がまだどこも営業していない中で、朝9時頃には「水を売ってほしい」というお客様で行列ができたんです。その日は在庫のある限り、水だけを販売しました。
地震直後の店内
大きな被害を受けた自宅
1月3日には可能な限りの商品を並べ、営業を再開しました。
当時、市内で開店していたのは、私たちを含めてわずか3店舗しかなかったと記憶しています。
水道の復旧も地域によってバラつきがありましたが、うちは1月14日には水が使えるようになりました。その時点で他店では扱えない生鮮食品を提供できました。
加えて、店舗併設のコインランドリーやトイレなども無料開放しました。
ライフラインの確保が困難な状況のなか、地域の暮らしを守る一助となれたことは、本当に意味のあることだったと感じています。
─非常に大変な状況だったのですね。
常連のお客様から「開けてくれて本当にありがとう」と声をかけられたときは、本当に嬉しかったです。
何のために商売をしているのか、という問いに、これまでは「地域貢献のため」と頭では理解していましたが、この地震を通して“地域貢献”という言葉の意味を、はじめて実感できた気がします。
「店舗を営業すること」で「地域の暮らしを支えること」こそが、私たちが商売を続ける意義だと気付かされました。
この地で続けることが地域貢献
─今後の展望についてお聞かせください。
新たな店舗展開は、今は考えていません。それよりも、この七尾の地で、ロフティを守り続けることが一番大事だと感じています。
創業からの想いでもある「おいしいものを地域の人に食べてもらいたい」という気持ちと、この地で地元の食材を買える場所をなくしてはならないという強い想いがあります。
これからも地域の生産者や業者と連携しながら、この店を守り、地域に貢献し続ける商売をしていきたいと考えています。
設立:1985年7月1日
事業内容:食品スーパーマーケット
INFORMATION
店名:
有限会社 スーパーロフティ(ぴゅあロフティ)
住所:
石川県七尾市高田町ほ部43番地
電話番号:
0767-68-3777
営業時間:
9:00〜19:30
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