【Relation】石川県の中小企業経営者インタビュー vol.16|建築・まちづくり「株式会社kyma」土用下淳也氏

【Relation】石川県の中小企業経営者インタビュー vol.16|建築・まちづくり「株式会社kyma」土用下淳也氏

石川県金沢市を拠点に、地方都市の課題や魅力に寄り添い、住民や行政と協働してまちづくりに取り組んでいる株式会社kyma。
今回は一級建築士でもある代表取締役の土用下淳也(どようした・じゅんや)氏に、建設設計を通じたまちづくりへの想いをお話しいただきました。

「ごちゃまぜ」で地域を面白くしたい

株式会社kyma 土用下淳也氏

「うねり」を生み出す企業に

まずは業務内容と創業の経緯などを教えて頂けますか。

当社は建築とまちづくりの設計事務所です。地域との関わりを大切に、住宅、福祉施設、地域の拠点、まちづくりに関わる建築を設計・デザインしています。

株式会社kymaは、私が以前勤めていた五井建築研究所(金沢市)の「まち設計室」を分社化して2021年4月に設立しました。
当時会長だった、私の師である西川英治氏と立ち上げる予定の会社でしたが、道半ばで西川氏が亡くなったため、当時チームとして動いていた4名で、資本金を出し合ってその意志を引き継ぐこととなりました。

社名の「kyma」とはギリシャ語で「うねり」という意味です。

「うねり」は西川氏がまちづくりに関する論文発表の際に使っていた言葉で、「自分たちの仕事を通じて次の時代を作っていく、地域やまちが動き出すきっかけ=うねりを作りたい」との想いを込めています。

「あるものを活かす」がコンセプトの輪島KABULET(わじまカブーレ)「あるものを活かす」輪島KABULET(わじまカブーレ)(写真提供:株式会社kyma)

 

コロナ禍真っ只中での設立でしたが、立ち上げ時に苦労したことはありますか。

1年目は前職の五井建築時代から続く仕事があったので滑り出しは順調でした。

ただ、2年目は社会福祉法人や公益財団法人の仕事を請け負っていましたが、その予算の多くは補助金を想定したものでした。
コロナの影響で分配される補助金が少なくなったり、建築資材の高騰も相まってかなり厳しかったです。

3年目に入り社会に動きが戻ってきた中で、地道に続けてきた実績が評価され、新規の仕事も受注できるようになりました。

また会社の方針として、個人だけではなくチームで動くことも大切にしています。
代表取締役は私ですが、大事なことは会社のメンバーみんなでとことん話し合って決めています。

 

「kyma」というチーム

設立の経緯も含め経営者と従業員という立場を超えた関係でもあるんですね。社長から見てkymaはどんなチームですか。

立ち上げのメンバーは従業員というより共同設立者という意識です。

会社の考え方が偏ったものにならないように、多くの視点から意見をしっかり出し合った方が良いものができると思っています。

そして、私たちが一番大切にしている想いは、師である西川氏が残してくれた「人間に対する深い洞察力が現れた建築」という考えを芯として実現していくことです。

この想いのもと、より良いものを作ろうという点でみんなが同じ方向を見ることができていると思います。

社屋前で談笑する、株式会社kymaの社員
社屋前で談笑する、株式会社kymaの社員(写真提供:株式会社kyma)

 

チームビルディングの向上のために何かしていることはありますか。

最近では建物を建てる上で様々な事を知ることが大事だと考え、勉強会を開いています。
建築以外のジャンルも含めた課題図書を持ち寄り意見を交換し合うことで、多様な考え方に触れることができます。

その他に、週に1回社内で手作りランチ会なども行っています。
良いものを作っていくうえでチームビルディングは欠かせません。
このような協働体験がその礎になると考えています。

 

「ごちゃまぜ」が生み出す多様性

御社のWebサイトに「ごちゃまぜ」というキーワードが出てきますが、kymaにとってどんな意味を持っているんでしょうか。

私たちにとっての「ごちゃまぜ」とは西川氏が生前言っていた「人々が混ざり合う中で相互に関わり合い刺激し合う関係性を創り出し、それまで体験し得なかったような共感性を互いに呼び起こすことで、前向きに生きようとする心の様態を醸成すること」です。

簡単に言うと、世代も性別も障がいも越えた時に生まれる多様性を通じて、誰もが豊かに暮らせるまちづくりをしていくということです。

昔はみんなでいることが普通でした。それが時代の移り変わりや法整備によって子どもは保育園へ、高齢者は老人ホームへなどと単一的にグルーピングされてしまうことが増えました。

確かに世代や課題で共通項がある組織のほうが管理はしやすいですが、果たしてそれが本当に幸せなのだろうかと私たちは考えています。

例えばですが、もっとみんなが「ごちゃまぜ」になって一緒に過ごすことで、高齢者は介護される一方ではなく、子どもを見守るという役割ができる。子どもも高齢者の経験から多様性を学ぶことができるのではないでしょうか。

そのためには、単純に保育所と老人ホームの施設を横に並べるのではなく、お互いの関わり合いが生まれる設計デザインをしていく必要があります。

「商店街を地域の子どもの遊び場に変える」がコンセプトの、商店街に建つ小さな保育園
「商店街を地域の子どもの遊び場に変える」商店街に建つ小さな保育園(写真提供:株式会社kyma)

 

また現在、長野県の駒ケ根市にある商店街の一角にマンションを建てる計画に携わっています。

普通の縦に連なるマンションを建ててももちろん良いのですが、商店街の一部に路地をつくったり、マンションの共有部分を外部空間と繋げたりすることで、住んでいる人と訪れる人がまちに関わる仕掛けを作っていこうと思っています。

単に建物を建てるだけでなく、人と人、建築とまちなどの「“関係”をデザイン」することが設計の軸と考えています。

地方都市では人口減少が問題になっていますが、交流人口、関係人口の減少によって多様性が失われていることがそれ以上に問題であると私は考えています。

今後私たちがまちづくりに携わることで、まちの交流人口や関係人口が増えるきっかけとなる“関係”をデザインしていきたいですね。

 

小松駅のフリースペース兼フードコート、小松KABULET(こまつカブーレ)小松KABULET(こまつカブーレ)(写真提供:株式会社kyma)
小松駅の、誰でも自由に使えるフリースペース兼フードコート。既に広い世代に利用されている。

宮城県岩沼市の「生涯活躍のまち」構想の核となる、まちに開かれた「ごちゃまぜ」の拠点施設、JOCA東北(ジョカとうほく)JOCA東北(ジョカとうほく)(写真提供:株式会社kyma)
宮城県岩沼市の「生涯活躍のまち」構想の核となる、まちに開かれた「ごちゃまぜ」の拠点施設。

 

最後に“関係”をデザインしていくことを通じて、kymaが目指すビジョンを教えてください。

私たちがやりたいこともやれることも建築設計です。
今後はこの事業領域を広げ、コンセプトデザインの部分から関われるようにしていきたいです。

福祉施設の設計から学んできたことを他の分野にも活かしていきたい。そして建築設計やまちづくりへの「ごちゃまぜ」の想いが波及して、地域にいる人たちの関わり合いを生み出し、自分たちのまちを面白くしようと動き出す。kymaがうねりの起点となって、地域を面白くしていきたいと思っています。

株式会社kyma 土用下淳也氏

設立:2021年4月1日
事業内容:建築の企画・設計・工事監理・コンサルタント業務、まちづくりの企画・設計・工事監理・コンサルタント業務

INFORMATION

店名:

株式会社kyma

住所:

石川県金沢市東山2丁目6-14

電話番号:

050-3612-8413

※記事内の情報は記事執筆時点のものです。正確な情報とは異なる可能性がございますので、最新の情報は直接店舗にお問い合わせください。