石引|スペシャリティコーヒーの奥深さ「橘珈琲店(たちばなコーヒーてん)」

石引|スペシャリティコーヒーの奥深さ「橘珈琲店(たちばなコーヒーてん)」

「うちは珈琲しか出しませんがよろしいですか」
「ブラックしか出せませんがそれでも?」

ブラックが苦手といって店主の言葉にためらうなかれ。コーヒーの味わいの多様さを教えてくれる素敵な珈琲店です。

店でも家でもスペシャリティコーヒーの個性を

「石引町」バス停後ろの静かなお店

金沢駅・兼六園へ向かう方の石引町のバス停を目印に歩けば「橘珈琲店」さんの看板を見つけることができます。

横からでは珈琲店であることが分かりにくいかもしれませんが、正面まで来てみればこの通り。扉を開ければ華やかなコーヒーの香りが漂ってきます。

この「橘珈琲店」さんは4年前に本田町の方から移転してきたとのことで、とても綺麗な店舗です。
建物は新しくとも店主の腕はこの道30年のプロフェッショナル。

店主が淹れるコーヒーを店内で飲めるほか、テイクアウトやコーヒー豆の販売も行っています。

 

ブラックへのこだわり

●コーヒー ジンバブエ 700円(税込)

私は苦め深めのいかにもブラックなものが好きなので、ジンバブエ産の豆を使った深煎り焙煎の1杯を淹れていただきました。

このお店ではコーヒーにミルクや砂糖は付いてきません。コーヒー豆の個性を大切にするスペシャリティコーヒーはブラックで飲むのが筋である、というのが店主の信念だそうです。
代わりに甘味として小さなチョコレートを一緒に出してくれました。

こちらのコーヒー、渋みのようなものが全く感じられずとても美味しく飲めました。あまりに美味しく少しずつ口をつけていると、「そのコーヒーは冷めるとフローラルな香りが広がるからゆっくり飲むと良い」と店主の橘さんが教えてくれました。
少しおしゃべりを挟んでから飲んでみると確かに、先ほどまでのビターで深みのある香りから華やかな香りへと変化していてびっくり。

「橘珈琲店」さんのおしゃれなカップは全て九谷焼のものを使っているそうです。
店主の背後の棚にはいろんな柄のカップが並んでいるのが見えます。毎回どの器で出してくれるかという楽しみもありそうですね。

 

ブラックだけどブラックではない

「うちは珈琲しか出しませんがよろしいですか」
「ブラックしか出せませんがそれでも?」

これは私が入店した際に店主の橘さんに掛けられた言葉です。
私は苦くて深いブラックコーヒーも大好きなのでためらいなく席に着きましたが、初めてでブラックコーヒーがそこまで好きではない方は躊躇してしまうかもしれません。

しかし安心してください。橘さんの言葉をそのまま使うと、この店のコーヒーは「ブラックだけどブラックではない」ものもあるのです。

それがロー(raw)コーヒーと呼ばれる浅煎りの豆を使ったコーヒーで、会話の中でおすすめされたコロンビア産の豆を使ったコーヒーを2杯目にいただくことに。

 

●コーヒー コロンビア 850円(税込)

このコーヒーはインフューズド(infused)と呼ばれる焙煎方法を使っており、果実やハーブを一緒に用いることで香りを移して作られています。この1杯に使われているのは桃です。
コーヒーの道を行く人の間ではこの製法を邪道とする人もいるようですが、橘さんとしてはインフューズドであることを明かした上で注文してもらうのであればコーヒーの可能性を広げる選択肢として問題ないと考えているそうです。

さて、実際に飲んでみるとこれまたすごく美味しい。

浅煎りなのでとても軽やかで、まるで紅茶のように飲みやすい1杯でした。
桃の香りが絡んだ爽やかなコーヒーの味を表す語彙を私は持ち合わせておりませんので、ぜひ皆さんご自身で体験していただけたらと思います。

 

コーヒー豆と焙煎への想い

コーヒー作りの上で大切にしている要は豆のひき方や淹れ方よりも焙煎であると店主の橘さんは語ります。開店前に、店の奥の部屋でじっくりと焙煎をしているそうです。

技ありのドリップ方法もあるけれど、お客さんと楽しくおしゃべりしながら気楽に淹れてもコーヒーの個性が引き立って美味しい、豆を買ったお客さんが家で淹れても同じく美味しい、そんなコーヒー豆を焙煎によって作り出すことが1番のこだわりなのだそうです。

ちなみに、橘さんが初めてコーヒーをドリップしたのは小学2年生の頃なんだとか。

コーヒーのお品書きの1番下に「桜ブレンド」という項目があります。
こちらは季節ごとに店主が考えてブレンドしているオリジナルコーヒーで、想春→桜→新緑のように切り替わっていきます。

その年の豆の味を見てブレンドを決めているため、同じ「桜ブレンド」という名前でも、去年と今年ではまた異なった味わいが楽しめるそうです。

私が店にいる間にも2人の常連さんがテイクアウトしていきました。こちらもさぞ美味しいのでしょうね。

 

店主の第二の顔

店主の橘さんの帽子と本棚にあるディック・フランシスの本の多さ、そして本のタイトルにちらほら含まれる「馬」「騎手」の文字。

気になってお聞きしたところ、なんと店主は珈琲店の傍らで競馬用の馬のトレーナーもなさっていたらしいです。現在の本業は珈琲屋に移ったそうですが、今でも金沢大学の馬術部に赴いて指導をされています。

また、松任谷由美さんの本も何冊かあり、私がいる間ずっと店内にユーミンの曲が流れていました。こちらは橘さんのご趣味だそうです。

 

常連さんに愛されるお店

本棚を見ていると、常連さんが置いて行ったという本もたくさん混ざっていました。

お店に飾ってある絵も、来店した画家の方が画廊がわりに置いているものなのだとか。

私がコーヒーを2杯飲んでいる間にも、何組かの常連らしきお客さんが入ってきて、コーヒーを味わいながら店主とのおしゃべりを楽しんでいました。その方々の雰囲気からもこのお店が好きなのだろうということが伝わってきます。
私も「桜ブレンド」を飲むためにリピートすること心に決めました。

あなたもぜひ、兼六園や県立図書館などのついでに足を伸ばして一息ついてみてはいかがでしょうか。

INFORMATION

店名:

橘珈琲店(たちばなコーヒーてん)

住所:

石川県金沢市石引4丁目5−1

電話番号:

076-254-1819

営業時間:

12:00~18:30

定休日:

毎週火曜・水曜

一人当たりの予算:

〜1000円

※記事内の情報は記事執筆時点のものです。正確な情報とは異なる可能性がございますので、最新の情報は直接店舗にお問い合わせください。

WRITTEN BY
オカモト

オカモト

ライター

4年間の大学生活in東京を終えて金沢に帰郷しました。東京の友人たちに「金沢に来るときは私を頼れ」と宣言し、金沢の「美味しい」「楽しい」を発掘する使命を自らに課しています。ライターとしては駆け出しですが、ふるさとの新たな魅力をたくさん発見していく所存ですのでよろしくお願いします。