
湯るっと、かなざわ。銭湯めぐり。

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東山|「大和温泉」で、あいらぶ湯。〜湯るっと、かなざわ。銭湯めぐり。vol.2
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金沢の観光地「東山」。非日常を味わえる場所の近くで暮らす人々にも日常がある。そう、銭湯は日常なのである。日常を求めて向かう先は「大和温泉」だ。
車を停め、進むはネオンの道。昔ながらの銭湯でありながら、アートの香りがするのは気のせいだろうか。
目次
アートと日常が共存する銭湯で、ゆるっと。「大和温泉」で身体も心も癒す。
「大和温泉」外観
アートを感じる銭湯「大和温泉」へ
入口裏にある駐車場に車を停め、入口に向かう。通路に近づくと、何やら見られない電灯が目に入る。夜になると通路がネオンで彩られ、異世界感を味わえる。
建物裏の駐車場から見える「ゆ」は温泉を指すのではなく「スタジオゆ」を指すものらしい
夜は通路がネオンで彩られる
のれんをくぐると、すぐに番台と憩いのスペースがある。昔ながらの銭湯の佇まいと思いきや、見上げるとネオン管アートが異質感を醸し出している。アーティストの共同スタジオ「スタジオゆ」が湯煙を表現して制作したアートらしい。
憩いスペース
ネオン管アート
下駄箱に靴を入れ、受付で支払いを済ませる。PayPayのほか、各種クレジットカードも使用できる。現金がなくても利用できるのはありがたい。
ブーツも入れられる下駄箱
受付は番台で
男湯ののれんをくぐり、脱衣所へ。コート掛けもあり、寒い季節には重宝しそう。
男湯はこちらから
ロッカーもおしゃれ
浴室に入ると、ほかの銭湯とは異なる雰囲気を感じられる。その理由は、中央に立つ大きな電球と、兼六園のシンボル「徽軫灯籠(ことじとうろう)」だ。実は、電球を回転させる案もあったらしい。日中は日差しがよく、気持ちも明るくなる。
大きな電球と徽軫灯籠
まずは身体を洗う。いや清めると言ったほうが正しいかもしれない。シャワーヘッドは、昔ながらのザ・銭湯のものだ。角度を自由に調整でき、個人的には一番好きなタイプ。銭湯らしく、シャンプーやボディソープは持参が必要。
ザ・銭湯のシャワー
窓が多いサウナ
身体を清め、水気を拭いたらサウナへ。広くはないが窓が多く、時計やテレビは窓から見る仕様になっている。外の様子もうかがえるため、子連れでも利用しやすいのはありがたい。ただし、子どもからの「早く出てきて!」というプレッシャーも受けやすい。
サウナ内装(100℃)
窓から浴室の様子が見える
サウナ室から時計とテレビが見える
100℃と高めの温度設定で、0分・20分・40分と20分ごとのオートロウリュもついており、サウナ好きの欲求をしっかり満たしてくれる。オートロウリュを味わうためには、タイミングが重要だ。
オートロウリュは20分ごと
サウナに入室する際は、サウナ室付近にあるサウナマットを持って入る。サウナ室のベンチは木製ではなく石製。これはかなり珍しく、高温サウナ好きには好評とのこと。以前はサウナマットがなく、浴室のイスを持ち込む文化があったらしい。今はイスの持ち込みは禁止となっている。なお、男湯のサウナマットのほうがサイズが大きいらしい。
サウナ室がコンパクトな分、ロウリュによる蒸気が部屋中に広がるのが早い。特に、サウナストーブの横に座った場合の熱さはたまらない。慣れていなければ我慢できないだろう。無謀にも立って蒸気を浴びた私は耐えられず、すぐにサウナ室を出た。
全身シャワーと初心者に優しい水風呂
サウナ室を出たら汗を流すのがマナーだ。浴室の奥を見ると、気になる設備が目に入る。立っているだけであらゆる角度からお湯を浴びられるボディシャワーが!一瞬で全身ビショビショになる。温度もちょうどよく、子ども受けするうれしい設備だ。
一緒に行ったわが子は、回転しながら嬉しそうに使用した。大人である私は、はしゃぎたくなる気持ちを抑え、あくまでもクールにボディシャワーを使用する。回転しながら。
全身シャワー。水の勢いがすごい
クールに汗を流したら水風呂へ。特に水を冷やしてはいないらしく、少し高めの水温とのこと。体感では18℃くらいだろうか。この温度なら水風呂が苦手な人や子どもも入りやすいだろう。水風呂が苦手な人にはぜひおすすめしたい。
水風呂は井戸水を使用
女湯の水風呂は犬の口から水が出ている。上に載っているのは鳥?
隣のマンションが近いため、以前あった外気浴スペースは利用できないとのこと。脱衣場で休憩する利用者が多いらしい。観光地らしく、外国人の利用者も多い「大和温泉」では、文化の違いを感じることもある。スリッパを持参する人もいるらしい。
木が濡れないようにしていれば、このベンチに座ってもよいとのこと
ここでもくつろげる
しっかり水気を拭き、脱衣所でととのう。実は、脱衣所に洗面所がない。床がビショビショになる心配がないのは、推したいポイントだ。
加水なしの湯船
サウナを楽しんだら湯船へ。モール泉の温泉で加水なし。42℃としっかり温める温度のため、疲れを癒やしてくれる。昔はアルカリ度が高く、色も濃かったが、歳月を重ねるにつれ薄く変化してきたとのこと。温泉の色で歳月を感じられるのは新しい発見だ。
男湯の浴槽は1つだが、3つに区切られている
女湯は浴槽が2つ
ジェットバスも
近くで見るとジェットの勢いがすごい
多くの銭湯では湯船に蛇口があるが、ここには蛇口がない。無用なトラブルを避け、気持ち良く入浴してもらうためらしい。常連の利用者も多く、気軽に会話をしている様子も見受けられた。憩いの場になっているのだろう。
身体と心を癒し帰路へ
しっかり温まると、最後に水風呂に浸かり脱衣場へ。最後に水風呂に入ると、身体の中から温まる。個人的には、おすすめの入り方だ。
ドライヤーは無料で使用可
着替えながらベンチに座ったり扇風機の風にあたったり
風呂場を出て憩いのスペースへ。湯上がりの飲み物はいつも迷う。ビタミン補給かお決まりのコーヒー牛乳か。3月で販売終了というニュースを見たこともあり、コーヒー牛乳を選択。グビッと飲み干しのどを潤す。相変わらずうまい。
ちなみに、牛乳メーカーが次々にガラス瓶牛乳から撤退する中、こちらで販売するメグミルクの商品は中止の予定なし。「大和温泉」では、これからも風呂上がりのコーヒー牛乳が楽しめる。
コーヒー牛乳のほかにも飲み物がたくさん
爽とパピコとガリガリ君の種類の多さに驚く
外に出ると特別な空間から戻ってきたような気持ちになる。満足感一杯でゆるゆると帰路につく。
「大和温泉」のカナメ|インタビュー
経営者である村上憲明(むらかみのりあき)さんに「大和温泉」の歴史や大切にしている想い、カナメ(要)について話を聞いた。
「大和温泉」の歴史
「大和温泉」は、昭和30年(西暦1955年)頃に開業し、70年にわたって地域の人々の生活に根付いてきた銭湯だ。元々は、十三間町にあったが、町中ということもあり、来客が少なく、当時は住宅街であった東山に移転したらしい。
村上さんは3代目になるとのこと。24歳にして事業を継いだという。
「元々は別の銭湯でしたが、祖父が引き継ぎ『大和温泉』として開業しました。2代目にあたる父が早くに他界してしまい、借金を返すために事業を継がざるを得なかったのがはじまりです」
はじめは、やらざるを得ない状況から始めた銭湯だったが、次第に使命感も芽生えてきたようだ。
経営者の村上さん
公共浴場としての使命とサービス業としての葛藤
元々、銭湯は地域住民の生活を支える施設としての役割を担っている。「大和温泉」も、コロナ禍の来客が見込めない時期でも営業したり、能登半島地震の際もいち早く被災者の無料入浴支援を実施したりと、地域住民を支えるべく取り組んでいる。
しかし、近年は全国的に銭湯の数自体が減少しており、金沢市も例外ではない。
「時代の変化を感じるようになりました。実は競合と捉えているのはスポーツジムなんです」
近年はシャワーやお風呂があるスポーツジムが増えてきており、月額制で何度でも利用できる。銭湯としての役割が、意外なサービスに奪われつつあるのだ。
「大和温泉」では今後、デジタル化やサブスクリプションの導入も考えているとのこと。ただ、葛藤もあるのが事実だ。
「サービス業として集客に取り組みたい気持ちと、公共浴場としての銭湯の意義を守りたい気持ちで葛藤を抱えています」
アート銭湯としての取り組み
「大和温泉」の特徴として挙げられるのは館内外のアート作品だろう。発端となったのは、北陸新幹線開業だ。外国人誘客の一助とするため、金沢市が「大和温泉」に提案したのが「アート銭湯」への取り組みだった。
「はじめは銭湯とインバウンドになんの関係があるのか?と思っていました。予算も多いとはいえず大変でした」
疑心暗鬼で取り組み始めたものの、村上さんは次第にある施設が気になるようになってきたそうだ。
目指すは金沢の「I♥湯」
村上さんは、アート銭湯への取り組みをするにあたり、参考になる施設を巡った。その中で目に留まった施設のひとつが香川県にある温浴施設「I♥湯(あいらぶゆー)」だ。アーティストの大竹伸朗氏が手がける実際に入浴できる美術施設で、国内外から訪れる旅行客と直島島民との交流の場として作られた。
「I♥湯」は、外装や内装はもちろん、浴槽や風呂絵、トイレにいたるまでアート作品がちりばめられている。感銘を受けた村上さんは「おこがましいですが『I♥湯』のような銭湯にしたい」という想いがあるそうだ。
「大和温泉」の建物の3階には「スタジオゆ」のアトリエがある。今後もさまざまなアート作品が見られるだろう。日常でありながら非日常を感じられる銭湯として、今後が楽しみだ。
人と人とのつながりを大切にしたい「大和温泉」
「デジタル化やオンライン化が進み、客層も変化してきた。しかし、人と人とのつながりが大切であることは変わりません」と村上さんは語る。
村上さんは日中の営業時間にお風呂を利用し、利用者との会話を楽しむらしい。村上さんが大切にしているのは、誰でも気軽に来れる場所の提供だ。
「現在は家にお風呂がある家庭が多いうえに、金額的にも毎日利用できるものではありません。しかし、家にお風呂がなかった時代は、銭湯が生活の一部でした。銭湯に対する習慣を残せるようにしていきたいと思っています」
「大和温泉」はアート銭湯という非日常を感じられる施設でありながら、日常の場としての役割も果たしている。地域の人も旅行客も集まる憩いの場。これが「大和温泉」のカナメだ。
「利用者同士で会話を楽しんでいる光景もよく目にします。銭湯に馴染みがない方も、安心してぜひ足を運んでほしい」
村上さんの銭湯の想いを受け「大和温泉」は人と人をゆるやかにつなぐ憩いの場所として残り続ける。
「大和温泉」施設情報
【利用料金】
・大人(高校生以上):490円
・中学生〜専門学生・大学生(13〜22歳):300円
・小学生(7〜12歳):130円
・幼児(6歳以下):50円
・ふれあい入浴:160円(金沢市ふれあい入浴補助券をお持ちの65歳以上の方)
※サウナ利用料金無料(サウナマット付き)
【設備】
・浴場:男湯1つ・女湯2つ(42℃)
・洗い場:シャンプー・ボディソープなし。男湯19席・女湯24席
・ドライサウナ:100℃(20分ごとにオートロウリュ)
・水風呂:18℃(水深約50m)
・全身シャワー
・ドライヤー
INFORMATION
店名:
大和温泉
住所:
石川県金沢市東山3丁目25番17号
(駐車場20台・駐輪場あり)
電話番号:
076-251-4343
営業時間:
14:00〜23:00
定休日:
金曜日
一人当たりの予算:
〜1,000円
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