
湯るっと、かなざわ。銭湯めぐり。

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泉野町|「Zささのゆ」で歴史と心地よさを味わう。〜湯るっと、かなざわ。銭湯めぐり。vol.6
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金沢市立泉野図書館を構える泉野町。住宅が立ち並ぶ中に、歴史を感じる銭湯を味わえる場所がある。「Zささのゆ」は地域に根付いたコミュニティを感じさせてくれる銭湯だ。名前からして由来が気になるこの銭湯。「Z」に隠された意味とは。ここは歴史も心地よさも感じられる場所だった。
目次
歴史を感じられる銭湯で、ゆるっと。「Zささのゆ」で身体と心を落ち着かせる。
石碑に目がいく銭湯
歴史を感じる銭湯「Zささのゆ」へ
駐車スペースとなっている向かいのアパートの駐車場に車を停め、入口に向かう。まず目に入るのが角にある石碑だ。石碑には「木村栄博士生誕の地」の文字が刻まれているが、一見、銭湯とは関係なさそうにも感じる。同じタイミングで入ってきた人たちは特に気にしていないようだ。常連客にとっては「当たり前」なのかもしれない。
敷地内の駐車台数は5台(軽専用1台・カーポート1台含む)
向かいのアパートの駐車場にも4台の駐車スペースがあり、計9台駐車可能
存在感のある石碑
傘立てがあるのはうれしい
入店すると、すぐに番台と憩いのスペースがある。昔ながらの銭湯の佇まい。天井を見ると見慣れない並びの照明がある。天体をイメージしているらしい。果たして銭湯と天体にどのような関係性があるのだろうか。
天体をイメージした照明
下駄箱
憩いのスペースにはマッサージチェア
壁には力士たちの手形
受付の左右から男女それぞれの入浴スペースへ
受付で支払いを済ませる。現金のみの対応となっているため、くれぐれも現金を忘れないようにしたい。原則シャンプーやボディソープは持参が必要となっているが、受付でも購入可能。綺麗に陳列されており、わかりやすい。
シャンプーやタオルなどの料金表
コンパクトで整った脱衣所と洗い場
男湯に入ると、少しコンパクトな脱衣所。昔ながらの銭湯あるあるのひとつに「ロッカーの番号順がバラバラ」があるが、しっかり連番になっている。利用者のマナーの良さがうかがえる。
男湯の脱衣所
男湯の脱衣所 左に見える窓がある理由は後ほど
ちなみに男湯と女湯では、脱衣所の広さがまったく異なる。女湯は、男湯と同じ銭湯とは思えないほど広くてビビる。一瞬「ビビる大木」と「男女平等とは?」という言葉もよぎったが、グッと飲み込む。これは区別であり、配慮というものなのだろう。
女湯の脱衣所 男湯の3倍は広い
女湯はドライヤーも違う
浴室に入ると、大きな照明が目に入る。洗い場は銭湯では少し珍しいホース付きのシャワーヘッド。壁のタイルは近々張り替える予定らしい。個人的には、タイルが剥がれているのも銭湯らしくてたまらない。マニアックすぎるという声は勘弁してほしい。
存在感のある照明(男湯)
洗い場(男湯)
洗い場(女湯)
銭湯のたしなみとして、まずは身体を清める。シャワーヘッドの数は男湯が11個、女湯は18個。混雑時は譲り合いたい。
蒸気と謎があふれるスチームサウナ
身体を清め、水気を拭いたらサウナへ。Zささのゆのサウナは蒸気で温めるスチームサウナだ。サウナ室に入ると、1人用のチェアが目に入る。サウナ室でパーソナルスペースが確保されているのはありがたい。
サウナ室の入口 お子様は入れない
サウナ室のチェア
サウナ室は4人まで利用可
扉が閉まりにくいので、しっかり閉める
蒸気が出る設備(温度は50℃)
サウナ室の中には時計がないが、チェアに座って左を見ると窓がある。窓から見えるのは脱衣所の様子。「なぜサウナから脱衣所を見る必要があるのか?」と思いつつも目をやると、そこには時計が!
そう、脱衣所にいるときから気になっていたこの窓は、サウナ室から時間を見るための導線だったのだ。まさかの伏線回収に少しテンションが上がったものの、周りには人がいないため、この感情を誰にも伝えられない。仕方なく1人で声を出して喜ぶ。周りに誰もいないので、全然恥ずかしくない。切なさは残る。
女風呂は左右対称のため、座って右に窓がある。左を見ても壁しかないので注意が必要だ。
サウナ室の窓から脱衣所の時計が見える
「スチームサウナなので温度が高くないかもしれない」と思っていたが、その心配は要らなかった。数分おきの短いペースで蒸気が出るため湿度が高く、体感は他のサウナでの100℃並み。
蒸気が出るペースは時間ではなく、温度に合わせているらしい。ずっと熱いのも納得の仕組みだ。訪問時に目にすることはなかったが、サウナ室に、桶に水をくんで持って入る人がいるらしい。
チェアについた汗を流すためと思っていたが、聞くと「体を冷やすために使う人がいる」とのこと。果たしてサウナに入る意味とは?謎は深まるばかりだ。
ちなみに、案内にはサウナの利用が22:30までと記載されているが、設備の電源を落とすのが22:30であり、サウナ室の利用は構わないとのこと。
丁度良い水風呂と休憩スペース
サウナを出てシャワーで汗を流し、水風呂へ入る。16℃程度という水風呂は深さもあり、しっかり冷たさを感じられる。暑い時期の水風呂にはずっと入っていたいが、譲り合いの気持ちも忘れてはいけない。
シャワー設備(男湯)
水風呂(男湯)
浴室には休憩スペースがないが、混雑していなければ脱衣所で休憩してもよいとのこと。脱衣所は天井が低いため、冬は休憩にちょうどよい温度になるらしい。
脱衣所の休憩スペース
白山のめぐみを味わえる湯船
サウナを楽しんだら湯船を味わう。「毎日の掃除は欠かせない」という湯船は、温泉ではないものの、白山を水源とする井戸水で、なんと飲水も可能とのこと。身体の外からも中からも白山のめぐみを味わえる。深いほうの浴槽は43℃、浅いほうの浴槽は41℃と、しっかり温まれる温度となっており、疲れも吹き飛ぶ。
暑い時期は、温かいお風呂と水風呂の交代浴もおすすめだ。お湯は毎日入れ替えているとのこと。「1日の疲れを癒やしてほしい」という優しさが感じられる。以前は薬湯もやっていたが、現在は井戸水のみの提供となっているとのこと。
浴槽(男湯)
浴槽(女湯) 男湯と女湯の湯船は左右対称
ギャラリーコーナー(現在は休止中)
しっかり温まったあとは、水風呂で身体を締めて脱衣場へ。暑くなる季節はシャワーで水を浴びるのもおすすめだ。ドライヤーは無料で使用できる。脱衣場を出て憩いのスペースでオロナミンCを購入。ポカリスエットもあるため、「オロポ」を作るのもおすすめだ。
冷蔵庫
外に出る頃には満足感でいっぱい。心地よさを感じたまま、ゆるゆると帰路につく。
「Zささのゆ」のカナメ|インタビュー
経営者である新保正信(しんぼ まさのぶ)さんに「Zささのゆ」の歴史や大切にしている想い、カナメ(要)について話を聞いた。
「Zささのゆ」の歴史
元々は、天文学者「木村栄」さんの実家でもある佐々木さんが「笹野湯」として創業していた。しかし、55年前の1970年頃、新保さんのお父さんが「笹野湯」が売りに出ているのを見つけ、購入に至ったという。
新保さんのお父さんは、自分で本を出すほどの歴史好き。「Zささのゆ」にも出版した本が置いてあるほどだ。しばらくは「笹野湯」として経営していたものの、1993年頃、天文学者「木村栄」さんが発見した「Z項」にちなみ、「笹野湯」に「Z」をつけることになったらしい。
「『Z』に漢字が合わないと思ったらしく、『笹野湯』をひらがなにして『Zささのゆ』と名付けたそうです」
経営者の新保さん
地元の利用者との交流
「Zささのゆ」は住宅街に構えていることもあり、利用者の多くは地元住民だ。
「60歳以上がほとんどです。昔は学生の利用も多かったのですが、寮の移転により半分以下になりました。外国人も来ますが、その人たちも近くに住んでおりマナーも良いため、大きなトラブルはありません」
しかし、昼間は場所とりをするような、マナーを守らない利用者がいる場合もあるらしい。どのように注意しているのか伺ったところ、意外な回答が返ってきた。
「私が注意する前に、他の利用者が注意してくれるんですよ」
新保さんだけでなく、利用者とともにこの「Zささのゆ」の文化が築かれてきたことを感じられる。
癒しの場としての役割を果たす「Zささのゆ」
地元住民の利用者が多い「Zささのゆ」は、地域の癒しの場となる銭湯だ。新保さんも、そのような場所を提供したいという想いを持っている。これが「Zささのゆ」のカナメだ。
「日々の運営で『気持ちよかった』『ありがとう』と言われるのはやっぱりうれしいですね。『疲れをとりにくる場所』や『気分を変えに来る場所』として利用してもらえればと思います」
新保さんの銭湯への想いを受け「Zささのゆ」は、人々の疲れを癒やす場所として残り続ける。
「Zささのゆ」施設情報
【利用料金】
・大人(高校生以上):500円
・中学生〜専門学生・大学生(13〜22歳):300円
・小学生(7〜12歳):150円
・幼児(6歳以下):70円
・3歳以下:無料
・ふれあい入浴:160円(金沢市ふれあい入浴補助券をお持ちの65歳以上の方)
・回数券:5,000円(11枚つづり)
・髪染め:200円
※サウナ利用料金無料
【設備】
・浴場:男湯2つ・女湯2つ(43℃・41℃)
・洗い場:シャンプー・ボディソープなし 男湯11席・女湯18席
・スチームサウナ:55℃
・水風呂:16℃
・ドライヤー
INFORMATION
店名:
Zささのゆ
住所:
石川県金沢市泉野町3丁目18-16
(駐車場9台)
電話番号:
076-243-4205
営業時間:
14:00〜22:50(日曜・祝日のみ13:00〜22:30)
定休日:
月曜日
一人当たりの予算:
〜¥1,000
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