新竪町|初心者でも味わいが分かる?「詩」で選ぶ新感覚コーヒー体験「Pessoa Coffee Roasters(ペソアコーヒーロースターズ)」
金沢市新竪町にある「Pessoa Coffee Roasters(ペソアコーヒーロースターズ)」さん。「ポルトガルの詩人 フェルナンド・ペソア」を店名にしたコーヒー焙煎所は、一体どんな場所なのだろう?そんな気持ちで足を連びました。
目次
言葉とコーヒー1杯から世界を広げるきっかけをくれる場所「Pessoa Coffee Roasters(ペソアコーヒーロースターズ)」
新竪町商店街で見つけた、コンパクトながら奥深い焙煎所の秘密
新竪町商店街の大通りを歩いていると、その一角に佇む店構えが目に入ります。専用の駐車場はないので、近隣のコインパーキングを利用するか、公共交通機関でのアクセスがおすすめです。

入口の前に立つと、ガラス越しに暖かな光が漏れています。ドアを開けると、焙煎したてのコーヒーの香りがふわっと広がりました。店内は4席というコンパクトな造りです。イートインして長く過ごすというよりは少し立ち寄るのにちょうどよい空間です。



業界用語は使わない。誰にでも伝わる「詩のようなフレーバーカード」の魅力
カウンターにいたのは、きさくな雰囲気の店主・大野さん。

コーヒーの味を説明するとき、難しい言葉が並んでいて迷ったことはありませんか?ここでは、店主が綴った「詩」が道標になります。
メニューには、POUR OVER(ハンドドリップ)やカフェラテのほか、2種・3種の個性を飲み比べられる「FLIGHT(フライト)」もありました。飲み比べはフレーバーカードの詩と自分の感覚を照らし合わせながら、味の違いを体感してほしいという想いから用意されているそうです。
また、コーヒー豆はカウンターにあるフレーバーカードやコーヒー豆を実際に目でみて選ぶことができるそうです。それぞれに添えられたフレーバーカードには、まるで詩のような言葉が綴られています。「業界用語ではなく、誰にでもわかる言葉で」表現されたフレーバーの描写は、まさに詩を読んでいるような感覚でした。

●左:331 Honduras Entre Caminos(ホンジュラス)100g 900円(税込)
●右:531 Colombia Finca Lusitania(コロンビア)100g 900円(税込)
今回はこの2つの豆を自宅で楽しむことにしました。
店主の大野さんからは「豆:お湯=1:12の割合で濃い目に抽出し、最後にお湯を少し加えて調整すると個性がより際立ちます」とアドバイスをいただきました。
後ほど自宅で試してみたところ、コロンビアは桃のようなフレーバーから始まり、甘酸っぱさ、余韻が優雅に続きます。フレーバーカードを読みながら飲むと、自分が体感している味の感覚が詩としてそのまま言語化されているような、不思議な一体感がありました。
ホンジュラスは青リンゴの酸味が来たと思えば、その後チョコレートのカカオのような濃い味わいから、香りの強いシナモンのスパイシーな感覚まで感じられ、1杯でさまざまな体験ができるコーヒーでした。


両方とも味が個性的で面白いと感じました。この詩のおかげでこの面白い感覚を言葉としても思い出に残せることがありがたい。
「このカード、すごくわかりやすいですね」と伝えると、大野さんは笑顔で答えてくれました。
「もともとはもう1人の店主が書いていたんです。ポルトガルの詩人の名前を店名にしているくらいなので、詩っぽく書いていて。自分の感覚として、どのタイミングで飲んでほしいのかを考えて書いているんですよ。今は私も書くようになりました」
詩人でもあるもう1人の店主が最初に始めた詩のようなフレーバーカードを、今では大野さんも書くようになった。2人の個性が交わって生まれるのが、この「Pessoa Coffee Roasters」さんのコーヒーなのです。
離れていても心は通う。コロナ禍から生まれた「コーヒーチケット」の軌跡


店内を彩る100枚を超えるコーヒーチケットには、名前や絵が自由に描かれています。これは、数回分を先払いするとお得にコーヒーが飲める制度。開業直後の緊急事態宣言でお客さんが店に来られない状況が続いたとき、つながりを保つために始めたそうです。


「近くに住んでいる人たちが、お金も持たないでふらっとコーヒーを買いに来られるようにしたいんです」
大野さんのその言葉に、心が温かくなりました。今では近所の方だけでなく、観光客の方も楽しむ「つながりの象徴」として、お店の日常に溶け込んでいます。
遠い国の物語を届ける、コーヒー豆という「タイムカプセル」

また来たいと思っていた「Pessoa Coffee Roasters」さん。数日後、再び訪れると、今度はカウンターに別の店主さんがいました。恩田さんです。実はこのお店、2人の店主さんが交代制で営業されています。
文学部出身で詩を愛する恩田さんは、コーヒー豆の持つ「世界の広がり」についてこう語ってくれました。「コーヒー豆は保存がきくので、遠い国の豆をそのまま日本へ持ってこられる。だからこそ、その土地ならではの味や香りを損なわないよう、最大限に個性を尊重して焙煎を行っています」
遠い異国の地で育まれた風味を、そのまま届けることができるコーヒー豆。カップ1杯のコーヒーを通じて、実際にその国へ行かなくても、その土地の空気感や農園の景色をありありと想像できる。それはまさに、日常の中にいながらにして「世界を広げるきっかけ」を受け取っているような感覚です。


店名の「Pessoa」は、ポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアに由来しています。恩田さんは文学部出身で詩や文学が好きで、コーヒーを飲みながら詩を書いていたといいます。ポルトガルに行って帰ってきてから、間借り営業でこの店を始めたのだそうです。

詩集を見せていただいたのですが、文章の中身や意味が深く、どういうことだろう?と不思議に思う表現もある一方で、文章の書き方や形式自体も今まで見たこともないようなユニークなスタイルで興味深かったです。
恩田さんは「詩集はライフワークとして、この店をやりながら作っていこうと考えています」と言います。今後は地元静岡で新しいことも考えていて、金沢と両立させながら2拠点生活を構想しているそうです。
対照的な2人が生み出す、世界が広がる空間
偶然の出会いから始まった。店名「Pessoa」に込められたライフワーク
実はコーヒー屋さんを始めるまで、コーヒーが特に好きではなかったという大野さん。人生の転機に恩田さんに誘われ、2019年にシェアキッチンからスタートしたそうです。
理論的に分析するのが得意な大野さんと、感性で味わいを捉える恩田さん。性格は正反対だという2人ですが、その個性が補い合ってお店を支えています。「世界を広げるきっかけになる」というコンセプト通り、この場所は遠い国の農園や、コンパクトな店内で隣り合わせた人との会話を通じて、訪れる人の世界を豊かに広げ続けています。
大野さんは言います。「最初は恩田が焙煎もフレーバーカードも全部やっていたんです。私は主に抽出を担当していたのですが、途中から私も焙煎とカード作成をするようになって、今は2人で交代しながらやっています。恩田と私は性格的には全然違うんですよ。恩田は音楽や美術、イラストなど文化的なことについて話すのが好きで、コーヒーの感じ方を考えることが好き。私はコーヒーを数値などで分析することが好きで」
面白い組み合わせです。大野さんは理論的にコーヒーを分析し、恩田さんは感性的に言葉で味わいを表現する。
「最初はバラエティ豊かに、さまざまな生産国の豆を選んだり、煎り具合もバランスよく提供していたんです。でも次第に、自分たちの好みを重視したものに変化していきました。甘味が強くフレーバーが顕著なものが多いですね」
大野さんは「出会わなかったらこの業界にいなかったので、その意味ではよかったなと思います」と話してくれました。たまたま近くにいただけという2人。家族のような関係ですが、その対照的な個性が互いを補い合い、お店を支えています。
お店のコンセプトについて、大野さんはこう語ってくれました。
「お店のコンセプトは『世界を広げるきっかけになる』なんです。コーヒーを飲みながら、農園の人や国を思い浮かべてもらえたら。コーヒーという飲み物が作ってくれた繋がりを感じてほしいんです」
恩田さんも言葉を添えます。「素晴らしい香味と豊かな個性。世界の拡がりを感じさせてくれるコーヒーをもっと多くの人に楽しんでもらいたい。最初は生産国のことを考えてもらえたら、という意味でコンセプトを作ったんです」
確かに、今この瞬間、私は遠い国の農園に想いを馳せていました。保存のきく豆が運んできてくれた「その土地の物語」を、この小さな場所で受け取っているのです。
「でも、実際にやってみると、小さな店内だからこそ、他のお客さんの会話が自然と聞こえてくる。その会話から、今まで知らなかった物事に気づいたり。お客様同士の交流の中でも、世界が広がっていたんです」
なるほど。この空間は、遠い国への想像力を育むだけでなく、隣に座る人との偶然の出会いも生み出しています。コーヒー豆が運んできた異国の風と、金沢の街角で交わされる言葉。その両方が、訪れる人の世界を少しずつ広げていくのだと感じました。
何度でも帰りたくなる、日常の止まり木
「お客様にはどんな時間を過ごしてほしいですか?」
大野さんは柔らかく答えてくれました。「思い思いに心地よく過ごして、また他の人も心地よく過ごせるようにしてもらえれば。特に思うことはないんです」
押し付けがましくない、自然体の姿勢。それがこのお店の心地よさの理由です。
この小さな焙煎所は、私の世界を少しだけ広げてくれました。また来よう。次は違う豆を飲んでみたい。そして、また新しい世界に出会いたい。
「Pessoa Coffee Roasters(ペソアコーヒーロースターズ)」さんは、詩人の感性と分析的な視点が交わる場所。対照的な2人の店主さんが、それぞれの個性を活かしながら、コーヒーを通じて世界を広げ続けています。
ふらっと立ち寄れる日常のひとつとして、この小さな焙煎所は今日も新竪町で豆を焙いています。
INFORMATION
店名:
Pessoa Coffee Roasters (ペソアコーヒーロースターズ)
住所:
石川県金沢市新竪町3丁目120-1
(駐車場なし・近隣にコインパーキングあり)
電話番号:
なし
営業時間:
平日10:00〜18:00
土日10:00〜19:00
定休日:
なし
一人当たりの予算:
〜¥1,000
※記事内の情報は記事執筆時点のものです。正確な情報とは異なる可能性がございますので、最新の情報は直接店舗にお問い合わせください。







