長田|季節の移ろいを感じる蕎麦屋。古民家で過ごす特別なひととき「手打蕎麦 こより」
久しぶりに会う人とゆっくり話したい日。
大切な人をお祝いしたいとき。
そんな時間を過ごすには、昼の完全予約制で営む「手打蕎麦 こより」さんがぴったり。
気兼ねなく、かしこまらずに、でもいつもより少しだけ特別なひとときを。
旬の食材を使った天ぷらと、戸隠蕎麦を味わえるお店をご紹介します。
目次
大切な人と訪れたい。季節と戸隠蕎麦を味わう「手打蕎麦 こより」

住宅街の路地を進んだ先、静けさをまとう古民家
金沢駅から歩いて15分ほど。車の往来が途切れない金石街道から、車がゆっくりすれ違えるほどの道に入ると、長田の住宅街が広がります。
さらにその奥、入り組んだ細い路地を進むと、ふっと空気が変わる瞬間がありました。そこに立っているのは、どっしりと構えた古民家。
暮らしの景色が続く家々の中で、ここだけ時間の流れが静かに変わるような佇まいです。それが「手打蕎麦 こより」さん。
予約制だから叶う、穏やかなひととき
お蕎麦屋さんでは珍しく、営業は完全予約制のお昼のみ(2025年取材当時)。開店当初は予約制ではありませんでしたが、「ゆっくり過ごしてほしい」という店主・山口さんの思いから、現在の形に落ち着いたそうです。

のれんをくぐると迎えてくれるのは、土間を改装した待合室。思わず深呼吸したくなるような落ち着いた空気があり、金沢駅から歩いてきただけなのに、どこか遠い場所に来たような気持ちになります。
古民家を改装した店内は、どこか懐かしく、それでいて不思議と洗練されています。賑やかではないものの、肩に力が入るような静けさでもなく、穏やかでゆったりとした時間が流れていました。


店内には、2名で横並びになれる縁側席から、最大6名まで座れる大きなテーブル席までさまざまなお席があります。気心の知れた2人でも、家族や友人のグループでも、ゆったりと食事を楽しめる配置です。

木漏れ日が美しい3名掛けのテーブル席

足元には荷物を置ける戸隠竹細工のかご
瑞々しい戸隠蕎麦「ぼっちもり」
長野県・戸隠の蕎麦屋に生まれ育った店主・山口さん。「こより」さんで味わえるのは、戸隠蕎麦の「ぼっちもり」です。今回は、旬の食材を使った天ぷらを添えた「天ざるそば」をいただきました。
●天ざるそば 2,800円(税込)
「ぼっちもり」とは、蕎麦の水を切らずに、ひと束ずつ分けて、丸い竹ざるに盛り付ける、戸隠蕎麦ならではのスタイル。
くるりと巻かれた蕎麦に箸をすっと入れると、さらりとほどけ、瑞々しさがすぐに伝わります。冷たく締められた蕎麦はほどよいコシがあり、のど越しはなめらか。噛むたびにふわりと蕎麦の香ばしさが広がります。

季節をそのまま閉じ込めた、「こより」さんの天ぷら
「こより」さんでは、天ぷらがもうひとつの主役です。蕎麦だけでは表しきれない季節の移り変わりを伝えたいと、旬の食材をふんだんに取り入れ、揚げ方にも細やかなこだわりを重ねています。

この日の天ぷらは、左からいちじく、加賀れんこん、銀杏、天使のえび、栗、さんま、みょうが、まいたけ、へた紫なす。地元産も含めて、その時季ならではの食材が揃いました。
山口さんは「お腹いっぱいになってもらいたい」と笑いながら話してくださり、天ぷらの種類も自然と増えていったそうです。
見た目はボリュームがありますが、野菜が中心で仕上がりも軽く、ひとつずつ味わっているとあっという間に食べ進めてしまいます。

なかでも印象的だったのは、いちじくの天ぷらです。
瑞々しさを保ちながら、とろりとした特有の食感もしっかりと残し、ひと口ごとに自然な甘さと芳醇な香りが広がります。秋の人気食材で、最後にデザートのように食べるお客様も多いのだとか。
ただ、いちじくは水分が多いため、最後まで水っぽくならないように、セミドライにして揚げるなど、細やかな工夫が施されています。

天ぷらに使う油は綿実油(めんじつゆ)。くせがなく、すっきりと揚がるため、たくさん食べても重たく感じません。蕎麦の香りともけんかせず、食材の良さを引き立てる「こより」さんらしさが表れています。
お出汁を味わうかけそば
●かけそば 1,300円(税込)

冷たい蕎麦の「ぼっちもり」と並んで、こよりさんでぜひ味わってほしいのが「かけそば」です。
京都の日本料理屋で修業していた山口さんが大切にするのは出汁。昆布と毎朝削る鰹節の香りがふわっと立ち上がり、見た目も味わいも澄んだ上品さがあります。蕎麦というより“お出汁を味わう1杯”です。
ぼっちもりは瑞々しさと冷たさで気持ちがすっと整うような気がしますが、かけそばは疲れた心をときほぐしてくれるようで、同じ蕎麦でも、まったくちがう表情を見せてくれます。
寒い季節にも、落ち着いて温かいものをいただきたい日にも、そっと寄り添うやさしい味わいです。
お店の要は“ご縁” ─店名「こより」に込められた思い─

戸隠産の根曲がり竹で作られた“ぼっちもり”専用のざる
山口さんは、長野県の戸隠蕎麦屋にて生まれました。大学卒業後、「やっぱり料理の道へ行きたい」と思い立ち、専門学校を経て京都の日本料理屋で修業を積みます。
その後、東京の蕎麦屋、実家、そして再び京都の蕎麦屋へ。
出汁のひき方、天ぷらの技術、産地によって表情を変える蕎麦の面白さ。
それぞれの土地で得た学びが、少しずつ自分の中に積み重なっていったと言います。

待合室を見守るねこの置物
そんな中、金沢市出身の妻・梓乃(しの)さんと出会い、この街で暮らすことに。
古民家との出会いも重なり、現在の「こより」さんが生まれました。
店名の「こより」には、季節を表す“暦(こよみ)”と音の響きが似ていること、そして紙を撚り合わせて紡ぐ“こより”のように、「人とのつながりが長く続いていくように」という思いが込められているそうです。
こよりさんの要(カナメ)は、これまで大切にしてきた“ご縁”の積み重ねです。

大切な人と、季節の天ぷらや蕎麦を味わいながら過ごす時間は、穏やかに心をあたためてくれます。お店を出る頃には、「次は誰を誘おう」「季節が変わったらまた来たい」と自然と思わせてくれる場所でした。
INFORMATION
店名:
手打蕎麦 こより
住所:
石川県金沢市長田2丁目20-13
(駐車場5台 ※うち2台は軽乗用車用)
電話番号:
076-205-4591
営業時間:
11時〜14時(最終入店)
※要事前予約
定休日:
日曜日・月曜日・祝日
一人当たりの予算:
¥2,000~¥3,000
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