末町|1日中、レコードとサイフォンに浸って過ごせるおうちカフェ「Siphon Cafe Sue(サイフォンカフェ スエ)」
Instagramを見てみると、「サイフォンコーヒー!?」「民家カフェでホームシアター?レコードが聴ける?」─何それ?
それが金沢で見つけた最高の隠れ家カフェ「Siphon Cafe Sue(サイフォンカフェ スエ)」さんです。
金沢学院大学近くの静かな住宅街に、ひっそりと佇む1軒の民家。1歩足を踏み入れれば、そこは懐かしい民家の温もりと心地よい音楽が見事に溶け合った、特別な空間です。
ここでは、サイフォンコーヒーの香りと、マスターとの会話、そしてゆったり流れるレコードの時間が主役。
忙しい日々を忘れて、心からリラックスできる場所を探しているなら、ぜひこの隠れ家カフェへ。本当の意味で「居心地の良さ」を追求した、マスターのこだわりが詰まっています。
目次
音と香りと会話を楽しむ贅沢時間「Siphon Cafe Sue(サイフォンカフェ スエ)」

住宅街の奥に潜む安らぎの場
「Siphon Cafe Sue(サイフォンカフェ スエ)」さんは、その魅力的な雰囲気を象徴するように、あえて金沢学院大学近くの静かな住宅街の奥に隠れています。初めて訪れる方にとっては、まさに宝探しのような感覚。その道のりこそが、これから始まる安らぎの時間への序章となります。
カフェを見つけるまで

県道207号線を走り、左手に日吉神社を見つけたら、次の交差点で「suzuki」の看板を目印に黄色のコーンのところを左折してください。その後、2つ目の曲がり角を左折し、さらに進んで2つ目の曲がり角を左折すると、公園が見えると思います。その手前に見えるのが「Siphon Cafe Sue」さんです! 私も最初来た際はどこから入るべきか分からず、道に迷いました。Googleマップの案内だと1つ隣のものすごい細い道でおすすめしてくるため、「suzuki」の看板を曲がるように気をつけましょう!
それでも分からない場合はご心配なく。マスターは「迷ったら電話を」と温かく道案内してくれます。
駐車場は4台あり、車でのアクセスもばっちりです!こちらの右側にもう2台入ります。
音楽と器が織りなすくつろぎの空間

広々としたゆったり空間
店内はテーブル席(4人×1、3人×1)、座敷席(5人)、カウンター席(3人)が配置されており、どの席も趣が異なるため、「次はどの席にしようかな」と迷う楽しみがあります。
4人テーブル席は、まるで実家のダイニングでゆったりとおしゃべりしているような感覚で過ごせる、落ち着いた空間です。
3人テーブル席は、ソファ席になっており、テーブル席との間に仕切りがあるため、よりリラックスして過ごしたい時にぴったりです。
カウンター席は、窓から公園の外を眺めながら、ゆったりと食事や作業ができる特等席です。Wi-Fiとコンセントが完備されているため、ノマドワーカーや学生さんにとって、作業にぴったりの環境です。
また、カウンター席の周辺には、レコードやスピーカー、そして高性能なヘッドフォンやイヤフォンの視聴機が設置されており、音響体験も楽しめます。
店内に響くのは、上の写真にあるマスターの親父さんが心地よいと感じるものを選別した音たち。
カフェの音楽全般についてはマスターの親父さんが管理しているそうです。
マスターの親父さんにお話を伺うと、YouTubeの音だと音質が劣化してしまうからと、あえてレコードやCD、Blu-rayそして高品質なスピーカーを使い、ここでしか味わえないマスターの親父さんの特色を出しています。カウンター席の音響は、どちらかというとストレートで純粋な音を出力する系。この後紹介する座敷席とは音響構築のアプローチが異なり、同じ音源でも違う音で聞こえるという新しい学びを得られるのも面白いポイントです。
また、マスターの親父さんに、壁にかけられた高性能イヤフォンを視聴したことがきっかけで、購入相談をしたところ、詳しく教えていただき、「SHURE SE846」をおすすめされました。今では私のお気に入りになっています。そうした音響ギアに関する細かな知識や相談にも気軽に答えてもらえるのが、このカフェの魅力のひとつです。
8.2ch音響とホームシアター体験の魅力
特に魅力的なのが、畳の座敷席。
この畳の座敷席の最大の魅力は、マスターの親父さんが趣味で構築した8.2chの音響システムです。壁一面に並ぶレコード、CD、そしてBlu-rayのコレクションに囲まれ、「実家の居間のように時間を気にせず、ホームシアター体験を楽しむ」ことができます。


実際、私も大好きなライブのBlu-rayを持ってきて、ここで鑑賞させてもらうことがよくあります。お客様からも「自分の家では聴けないから」「ここでまた聴きたいから」と、様々なレコードやBlu-rayが譲り受けられたそうで、この空間が音楽好きの場になっていることが伝わります。
本格的な音響設備ゆえに、Blu-rayの音響設定などでリモコン操作に迷うことも正直ありますが(笑)、そうした細々としたこともマスターやマスターの親父さんに気軽に相談できるのが、このカフェの温かい魅力。技術的なこだわりと、人情味あふれるコミュニケーションが共存しています。
選ぶ楽しさ:約50種類のカップがもたらす遊び心

棚に並ぶのは、家にあったものを活用したという約50種類の個性豊かなカップたち。特徴が異なるカップの中から、お客様に好きなものを選んで提供しやすいことも、マスターが大切にする「楽しさ」のひとつです。同じコーヒーでも器が変われば一味違う体験ができ、その遊び心がこのお店を特別なものにしています。
ゆっくりと時間を過ごせるメニュー

木・金・土・日曜日の朝の時間帯限定(7:30〜10:00)のおにぎりモーニングは、まさに心に染み渡る1日の始まりです。
メニューを眺めると、おにぎりの具材は10種類から2種類選ぶ方式で、ラインナップは胡桃(くるみ)、昆布、鮭、唐揚げマヨ、胡麻、漁師飯、タラコ、イカ昆布、明太子、焼きホタテ。
飲み物はそば茶、日本茶、梅昆布茶の中から1つ選びます。
おにぎりモーニングはマスターの親父さんが担当しており、おにぎりについて相談した結果、漁師飯と焼きホタテに、飲み物についてはそば茶が通常の2倍の濃さで抽出しているという珍しさでそば茶にしました。
●おにぎりモーニング 680円(税込)
今回頼んだおにぎりは「焼きほたて」と「漁師飯」のおにぎり。ふんわりと優しい味の焼きほたてと、魚の旨みがしっかり感じられる漁師飯は、どこか懐かしい温かさにあふれています。

副菜も豊富で、ピリッと辛い蒟蒻(こんにゃく)がアクセントとなり、酸味のあるトマト、さっぱりとしたなす・きゅうり・春雨が口をリフレッシュ。食後には香ばしく濃いそば茶と上品な甘さの抹茶わらび餅で締め。おにぎり、副菜、お茶、甘味がひとつの物語のように調和する、温かい体験です。

コーヒーはすべてサイフォンで丁寧に淹れられます。サイフォンは香りが高く立ち、味わいの変化を楽しめるのが魅力ですが、マスターがこの方式を選んだ最大の理由のひとつは「お客さんに好きなカップを選んで提供しやすいから」という、コミュニケーションを重視する想いからです。

マスター・外山さんは個人的に浅煎り系やフレーバー重視のコーヒーが好み。以前飲んだ「金沢美人」がお酒のような味わいで面白かった経験から、サイフォンで抽出することで香りやフレーバーを際立たせる豆を積極的に取り入れています。
いくつか私が飲んだコーヒーの紹介をするとゲイシャ(オレンジのような爽やかな柑橘系の風味)、金沢美人(お酒のような風味と深み)、ライオン(バニラ風味でスイーツとの相性抜群)。自家焙煎クラシックマタリ(軽やかなすっきりめのアメリカン)などがあります。


●エスプレッソプリンのアフォガード 800円(税込)
私が1番好きなのが、「エスプレッソプリンのアフォガード」。
しっかりと固めでありながらしっとりとした食感が特徴。エスプレッソのほろ苦さと、アイスにかかったチョコレートソースの甘さのバランスが絶妙です。右側に添えられたミニカップのエスプレッソをかける量によって、大人な苦みにもスイートなほろ苦さにも変化します。自分で味を完成させる楽しさも魅力です。
地域の個人店ではエスプレッソを扱うお店が少ないため、アフォガードのようなエスプレッソ系デザートやドリンクも提供しているそうです。

地域に開かれたユニークな体験
「Siphon Cafe Sue」さんは、カフェという枠を超えて、地域に開かれた交流の場を提供しています。
時折、望遠鏡で月や土星の環を観察するというユニークなイベントを参加費無料で開催しています。その目的はシンプルで、「地域の人と楽しい時間があったらいい」というマスターの温かい考えに基づいています。
こちらの望遠鏡で月や土星の環を観察されているそうです。まだ参加できていないので、いつか行ってみたい…

利益はその次!「居心地の良さ」の追求と哲学
このカフェの根底にあるのは、「居心地の良さ」と「お客さんとのコミュニケーション」を何よりも大切にするマスター・外山(とやま)さんの揺るがない哲学です。
飲食店での気づきと「空き家」の活用
飲食店で働いていた外山さん。そこで気づいたのは、回転率や効率を優先する環境では、お客さんとゆっくり話す時間が持てないということ。「お客さんとゆっくり話せる場所じゃないと、本当の居心地は作れない」という強い信念を持つに至りました。
同時に、空いていたおじいちゃんの家を活用したいという想いと、近隣住宅街にゆったり過ごせる喫茶店がないという地域のニーズが合致。そして、営利目的の制限から自らを解放し、この民家を、本当に大切にしたい「コミュニケーション」と「安らぎ」を最優先にした空間へと変えることを選んだのです。
無駄な時間こそが「癒し」
外山さんは明確に利益はよりもまずは訪れた人に心地よい時間を楽しんでもらうのが最優先だ、と語ります。この理念を体現するのが、あえて店内に置かれたレコードです。
「ゆったりと回転するディスクを眺め、いつものコスパを求めずに、一見無駄に思える時間も含めて癒される時間を提供する」
これが外山さんの考える究極の居心地です。レコードという手間のかかるものを使用し、温かい音色で空間全体の「リズム」を意図的にゆったりとさせています。このようにお客さんが長くくつろいでいけることが、このカフェの前提であり、最優先事項なのです。また、接客では単なる注文取りではなく、お客様との会話を何よりも大事にし、コミュニケーションの時間を確保することで、まるで家にいるようなリラックスした雰囲気づくりを徹底しています。
地域への還元とコミュニティの場
「Siphon Cafe Sue」さんは、単なるお店ではありません。それは、おじいちゃんの家だった場所を活用させただけでなく、「近隣住宅の皆さんが居心地よく過ごせる場」を作るという外山さんの想いの結晶です。地域にはゆったりと腰を落ち着けられる場所が少ないからこそ、この家を、地域の多様な人たちが集い、のんびりしていける場所として提供しています。
おにぎりモーニング、サイフォンコーヒー、レコードの音楽、器選び、そして心温まるおしゃべり…。
「Siphon Cafe Sue」さんでは、コスパを求めず、心を解放できる特別な時間が待っています。
INFORMATION
店名:
Siphon Cafe Sue
住所:
石川県金沢市末町5-58-2
電話番号:
076-229-4597
営業時間:
月水 11:00〜20:00
木金土 7:30〜20:00
日のみ 7:30〜17:00
定休日:
火曜日、第2・第4水曜日
一人当たりの予算:
〜¥1,000
※記事内の情報は記事執筆時点のものです。正確な情報とは異なる可能性がございますので、最新の情報は直接店舗にお問い合わせください。







