【Relation】石川県の中小企業経営者インタビュー vol.32|建築設計・補償コンサルタント「株式会社 中元建築設計事務所」中元直氏

【Relation】石川県の中小企業経営者インタビュー vol.32|建築設計・補償コンサルタント「株式会社 中元建築設計事務所」中元直氏

金沢市内で60年以上にわたり建築設計に携わる「中元建築設計事務所」。
建築設計と補償コンサルタントという、他にはあまり例のない2本柱で歩んできました。
代表取締役社長の中元直(なかもと・すなお)氏に、仕事や地域への想いについてお話を伺いました。

幸せの環を広げたい

中元建築設計事務所の中元さん

設計と補償の2本柱

─ まずは、会社の成り立ちを教えてください。

創業は1962年、祖父が県庁職員を辞めて設計事務所を立ち上げたのが始まりで、今年で64年になります。
社名の通り建築設計を主な業務としてきましたが、祖父が県庁職員だったこともあり、早い時期から「補償コンサルタント」の仕事にも携わっていました。

祖父から仕事の話を直接聞く機会はほとんどありませんでしたが、子ども心に「すごい人だ」と感じるくらい人脈が広い人でしたね。
店舗や工場など、住宅ではない建物を手がけていたことにも、祖父なりのこだわりがあったのではないかと感じています。

その後父が会社を引き継ぎ、私自身は2017年に入社しました。
父と共同代表として事業承継を進め、昨年、代表取締役社長に就任しました。

中元建築設計事務所の中元さん

─ ご自身はどのような経緯で入社されたのですか。

大学卒業後は地下タンクの会社に就職し、6年ほど営業をしていました。
文系出身で、建築とはまったく畑違いの世界です。

この事務所を父から「継いでほしい」と言われたことは1度もありませんが、子どもの頃から知る社員も多く、なくすのは寂しいという思いはありました。
父と話をする中で、建築の経験が乏しい自分にもできる仕事があると聞き、9年前にこちらに戻ってきました。

資格も取得しましたが、実際に図面を引くのは今も社員が中心なんです。

中元建築設計事務所が手がけたこども園

 

ふたつの視点を持つ強み

─ 現在の事業内容について、あらためて教えてください。

「設計」と「補償コンサルタント」の2つが柱です。

設計については、間取りやデザインを考える「意匠設計」と、耐震性などを検証する「構造設計」の両方を、自社スタッフで対応できるのが特徴です。

「補償コンサルタント」というのは主に官公庁からの仕事で、例えば道路の拡幅などの際に土地・建物を調査して補償額を算定する、いわば都市計画の入り口です。

ほかにも、工事前後の家屋調査などがあり、近年は解体業者など民間からの依頼も増えています。

小学校の被災調査

小学校の被災調査

─ 設計と補償の二軸の強みはどんなところにありますか。

補償コンサルタントを始めたきっかけは祖父が県庁OBだったことですが、実際にやってみると非常に相性の良い組み合わせだと感じています。

補償の仕事は、建物を移転させて建て直す想定で検討する場面もあり、建築の知識や、建物の収まり・仕上げに関する設計的な知識が役立ってくるんです。
逆に補償の仕事では既存の建物を見る機会が多く、それが設計の仕事に活きてきます。

そしてもうひとつ大きいのが、人とのつながりです。

家屋調査でのやり取りを通じて築いた信頼関係から、新たに設計のご相談をいただくこともあります。
補償は第三者的な立場で調査をする仕事なので、そこでの信頼関係はとても大事にしています。

こうした姿勢は、祖父の代から受け継がれているものでもあります。
「仕事はなるべく断らない」「困っている人にはできる限り対応する」という考え方は、私自身も大事にしたいと思っています。

─ 能登半島地震を経て、業界にはどのような変化がありましたか。

人件費や資材費の高騰は業界全体の課題ですが、能登半島の被災地はそこに輪をかけて厳しい状況にあります。
私たちは施工会社とお客さまをつなぐ立場でもあるため、相手の立場に立って、リスクを丁寧に伝えることが、以前にも増して大切になっていると感じています。

 

幸せの環を広げたい

─ 復興支援に携わる中で、感じたことはありますか。

公費解体のコンサルタント業務として内灘町を担当し、約550棟に携わりました。
潰れかけた家の持ち主の方々と直接やり取りを重ねる経験を通じて、自分たちの仕事が人の安心・安全に直結していることを改めて痛感しましたね。

内灘町液状化の様子

内灘町液状化の様子

─ そうした経験をふまえ、経営者として大切にしている考え方は何でしょうか。

昨年、初めて社員向けの方針発表会を開き、「幸せの環を広げる」という経営理念を伝えました。

設計や補償という仕事そのものというより、その先にいるクライアントや地域の人たちが、少しでも豊かさや好転を感じてくれること。それが私たちの提供したい価値なんです。

幸せの感じ方は人それぞれですが、それが伝播していくイメージを持っています。

補償の仕事は、建物を「建てる」というより「壊す」場面に立ち会うことが多い仕事です。
それでも、その先にある「人を幸せにする」という意味では同じ。
だからこそ社員にも「今の仕事のその先にあるもの」を意識してもらいたいと思っています。

中元建築設計事務所で談笑する社員

─ 最後に、これからの会社の展望を聞かせてください。

これまで年上の社員ばかりでしたが、近年は20代の社員も加わり、世代を超えた相乗効果が生まれ始めていると感じます。
将来的には空き家問題など地域課題にも力になれることを模索していきたいですし、社員1人ひとりが持つ夢を応援できる会社でありたいと思っています。

最近入った若手社員の中に、弟のジェラート店を将来自分で設計したいという夢を持っている人がいるんです。
そういう熱い思いを持つ社員を応援できる環境をつくることこそ、技術者ではない自分にできる経営者としての役割だと思っています。

それもまた、私たちが広げていきたい「幸せの環」のひとつの形だと思っています。

中元建築設計事務所の中元さん

創立:1962年12月

事業内容:建築設計・監理、補償コンサルタント、構造計算・耐震診断

INFORMATION

店名:

中元建築設計事務所

住所:

石川県金沢市扇町11番29号

電話番号:

076-262-3346

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