東山|人と文化のあいだを耕すコーヒー「Cafe Colere(カフェ コレレ)」
ひがし茶屋街から少し歩いた路地の先、私設図書館の一角に、コーヒーを介して人や文化との新たな出会いが生まれる場所があります。書斎のような1人席で本や作品に囲まれていると、ここで過ごす時間そのものが、誰かや何かとの縁をつないでいくように感じられました。甘さから始まる浅煎りのエチオピア、ライムを添えた飲み比べのアイスコーヒー。そして、人との縁に導かれてこの場所にたどり着いた店主の酒向さんと、「Cafe Colere」という店名に込められた思い。出会ったのは、1杯のコーヒーだけではありませんでした。
「コーヒーって、脇役なんです」そう話す店主が営む、川のそばの小さな喫茶「Cafe Colere(カフェ コレレ)」
ひがし茶屋街から徒歩約1分。路地の先に
ひがし茶屋街から徒歩約1分。東山の路地にたたずむ町家を活用した私設図書館「はるの図書館ゆーき」さん。その一角に「Cafe Colere(カフェ コレレ)」さんがあります。
普段は「ひがしやまのいえ」として地域に開かれ、満月と新月の夜には「夜の図書館」として開かれる特別な場所です。本や作品に囲まれた館内には、コーヒーを飲みながらゆっくり過ごせる席が用意されています。
大通りから少し外れた小道を歩いていくと、やがて小さな黒い看板が見えてきます。初めて訪れるときは、この看板を目印に進みます。お店には駐車場がないので、車で訪れる方は、近くのコインパーキング「パークステーション百番天神橋」がおすすめです。
静かな路地を抜けた先には、本と文化に囲まれながら、ゆっくりとコーヒーを楽しめる空間が広がっています。


川の流れを感じる場所へ

素敵な町家の設計士さんが夜の図書館とのご縁をつないでくださったことから、店主の酒向さんはこの場所で珈琲屋を営むことになりました。この場所を選んだ理由を聞くと、「川が流れている場所でやりたかった」と教えてくれました。
(写真提供:店主の酒向さん)
水が淀んでいる場所にいると、気持ちも止まってしまうような感覚がある。けれど、流れていく川が近くにあると、もやもやした気持ちも一緒に流れていくように感じる。
その言葉を聞いてから店内で過ごしていると、コーヒーを飲む時間そのものが、少しずつ気持ちをほどいてくれるように感じました。
店内には、そんな時間を過ごせる席があります。なかでも印象に残っているのが、1階の1番奥にある書斎のような空間です。


小さな1人部屋のように落ち着ける場所で、扇風機の風を浴びながら、コンセントで充電もできる席。
本を読んだり、少し作業をしたり、何かに集中したい時にぴったりの場所でした。
こういうふうに、1人で静かに夢中になれる席は、なかなか他のお店では出会えない気がします。
席数は合計で19席。
1階には、1人用の書斎席が1席、4人掛けのテーブル席が1卓、4人掛けのソファ席が1卓、カウンター席が3席あります。



2階には4人席、2人席、1人席があり、すべて座布団で過ごせる席になっています。



ガトーショコラとエチオピア・ウォテ コンガ

メニューは、コーヒーが中心です。
そこに、おむすびやトーストといった軽食、ケーキなどのスイーツがあります。
コーヒー以外にも、ジュースなどのドリンクが少し用意されているそうで、コーヒーを飲めない人も楽しめるお店です。
この日いただいたのは、ガトーショコラとコーヒーの中で1番浅煎りとされているエチオピア・ウォテ コンガ。

●ガトーショコラ 550円(税込)
運ばれてきたガトーショコラは、ずっしりと硬め。そこに軽やかなホイップクリームが添えられています。
ひとくち食べると、甘さは控えめ。重さはあるのに、すっと食べ進められるバランスです。
●エチオピア・ウォテ コンガ 650円(税込)
合わせたエチオピア・ウォテ コンガは、最初に甘さがくる1杯。浅煎りのため酸味もありますが尖っておらず、自然に馴染んでいてまとまりのある味わいでした。
ガトーショコラと合わせると、チョコレートの濃さのあとに、コーヒーの甘さと酸味がきます。
ケーキはドリンクとセットで100円引きです。お会計にはキャッシュレス決済も利用できます。

浅煎りと深煎りの2種を飲み比べられるアイスコーヒーもあります。
●「二種の焙煎」(エチオピア・ウォテ コンガ 2300)飲み比べSET(アイス珈琲) 1,000円(税込)
コーヒー豆はホットで飲んだエチオピア・ウォテ コンガです。2300というのは標高を指していて、豆が育った標高によっても味が変わってくるのだとか。
浅煎りは、尖った酸味ではなく、丸くてやさしい酸味。深煎りはしっかりとした深さがあり、いい苦味を感じます。
トッピングにライムを添えています。なぜライムなのかを問うと、コーヒーのフレーバーを説明する際によくライムのようなという表現があるけども言葉で説明されても分からないので、それならば実際にライムを提供してみたらイメージが湧くのでは?と考えて取り入れているそう。
どれにしようか迷う時間も、楽しみの1つです。苦いものが好きな人も、爽やかなものが好きな人も、自分の好みに合わせて選べます。
酒向さんのおすすめのメニューを聞いてみました。
「おすすめはコーヒーです。どのコーヒーもおすすめですね」と話していました。
私個人としては今回頼んだ浅煎りの「エチオピア・ウォテ コンガ」がおすすめです。他の浅煎りコーヒーとは毛色の違う感覚を味わえます。
人の縁に導かれて、たどり着いた場所
店主が最初から「自分のコーヒー屋を持ちたい」と思っていたわけではありません。
きっかけは、友人のお母さんからコーヒー豆をもらったこと。豆のまま渡されたものの、どう扱えばいいのか分からない。自分で試しても、うまくいっているのか分からない。
それならコーヒー屋で働いてみよう。そう思い、最初に「東出珈琲」へ電話をかけました。その時は正社員として働くことが難しく、さらに調べる中で、東出さんが「チャペック」から出たことを知ります。
そこで師匠のもとへ電話をかけ、「来てみるか」と言われたことから、「チャペック」で働く日々が始まりました。

約8年、焙煎や抽出の理論を学びながらコーヒーと向き合う中で、ある時ふと気づいたそうです。
「コーヒーって、脇役だ」

2人で来たお客さんの間にコーヒーを出す。すると、その1杯を挟んで自然に会話が生まれる。コーヒーを飲みながら、本やアートを眺める時間が生まれる。

もちろん、おいしいコーヒーであることは前提。けれど、コーヒーそのものだけが主役なのではなく、人と人、人とアートや本などの文化の間にあるもの。

そのことが自分の中にすっと落ちた時、「これはやりたい」と思ったそうです。

お店を始める場所を探していた頃は、暁町周辺をはじめ、金沢や富山の古い民家や町家をたくさん見て回っていました。休みの日に空き家を見に行き、「ここで自分ができるかな」と考える。けれど、なかなかしっくりくる場所には出会えませんでした。
そんな時、友人から紹介されたのが、暁町にある毎週日曜日だけ開いているとあるお店の一角。そこから始まり、お客さんとして来てくれた方とのつながりで、現在の「はるの図書館ゆーき」の場所を紹介されたそうです。

図書館の同時開館イベントでいくつかの図書館を巡った時、ここに並ぶ本や作品を見て「まさにここだ」と感じた店主。好きな作家さんの絵が飾られていて、そう思っていたら、その作家さん本人がふらりと入ってきたのだとか。
え、本人…!
自分で探していた時には1度も決まらなかった場所が、人の縁で自然につながっていく。そんな流れの中で、この場所にたどり着きました。
「Colere」に込められた、文化と心を耕す思い

「Cafe Colere」という名前にも、店主の思いが込められています。


約300年前のロンドンには、たくさんのコーヒーハウスがあり、そこから新聞のような文化が生まれました。中には科学実験が行われるコーヒーハウスもあり、コーヒーの場は、さまざまな文化が交わる場所でもあったそうです。
「culture」という言葉の語源をたどると、古いラテン語の「colere」に行き着きます。
「colere」には、土地を耕すという意味があります。そこから「cultivate」や「colony」といった言葉にも派生し、もともとは土地を耕すという意味だったものが、やがて人の心を耕すという意味へと変わっていきました。
「Cafe Colere」という名前には、コーヒーを通して何かを耕す場所でありたい、という思いが込められています。
豆の持ち味を活かす、幅のあるコーヒー

酒向さんの焙煎で大切にしているのは、毎回同じように焼くこと。
火の強さや時間、豆ごとのアプローチは異なりますが、目指しているのは、その豆にとって適正な焙煎度合いを見つけ、持ち味が出るところを狙うことです。

たとえばエチオピアやケニアのように、豆の強度が高いものは、深く焙煎しても特徴が損なわれにくいそう。普通は深煎りにすると香りなどが飛んでしまうことがありますが、ケニアやエチオピアは深く煎ってもちゃんと特徴が残ります。
そうした個性がしっかり残る豆については、そのよさを活かして、いろいろなアプローチを試しているそうです。
もう1つ大切にしているのが、ハンドピック。
生豆の状態で欠点豆を取り除き、焙煎後にも再度ハンドピックを行う。欠点豆をできる限り減らすことで、コーヒーの味わいをきれいに整えています。
生豆の仕入れも、信頼できる買い付け先を大切にしています。それぞれの国へ買い付けに行く人、現地で長年の関係を築いている人など、ずっと付き合いのある相手から仕入れているそうです。
市場にはない個人と個人の関係の中で届く豆もある。そう聞くと、目の前の1杯が遠い産地から人の手を渡ってきたものだと実感します。
コーヒーが、人と文化の間をつないでいく
今後は豆の種類を増やし、場面に合わせていろいろな提供ができるようにしていきたいそうです。
「コーヒーが欲しいと思って来てもらうだけでもいい。作家さんとの出会いがあってもいいし、会話が生まれてもいい」
帰り道、川沿いを歩きながら、あの書斎席でまたコーヒーと本との出会いを楽しみに行こうと思いました。
INFORMATION
店名:
Cafe Colere
住所:
石川県金沢市東山1丁目34-7
(駐車場なし・近隣にコインパーキングあり)
電話番号:
090-9448-1463
営業時間:
10:00~17:00
定休日:
不定休(詳しくはInstagramを参照ください)
一人当たりの予算:
〜¥1,500
※記事内の情報は記事執筆時点のものです。正確な情報とは異なる可能性がございますので、最新の情報は直接店舗にお問い合わせください。
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