武蔵町|「神社っぽさ」より先にある、縁をつなぐ1杯の哲学「神社Bar HOLY(ホーリー)」

武蔵町|「神社っぽさ」より先にある、縁をつなぐ1杯の哲学「神社Bar HOLY(ホーリー)」

金沢・近江町市場のすぐそば。
ふと路地を曲がると、鳥居が立つ小さなバーがあります。
名前は「神社Bar HOLY(ホーリー)」。
「神社バー」と聞くと、少し身構える人もいるかもしれません。
でもここは、なにかを信じさせる場所ではなくて、むしろ逆。
誰でも、ふらっと入って、会話の流れに合わせて1杯が整い、気づけばご縁が結ばれている。
そんな店でした。

神社っぽさは入口。中身は、会話がつなぐ夜。「神社Bar HOLY(ホーリー)」

金沢エムザから徒歩1分、鳥居が誘う不思議な路地へ

「神社Bar HOLY」さんがあるのは、金沢エムザの裏路地を少し歩いて約1〜2分。

「武蔵ヶ辻」バス停からも近く、コインパーキングも近くにある、アクセスの良い立地です。

目印は、店先に立つ鳥居。

巫女や神主の衣装を試着して、この鳥居の前で記念撮影をすることもできます。
外国人観光客の方が日本文化を体験する場として楽しんでいるとのことでした。

 

初めてでも輪になれる、カウンター中心の心地よい距離感

店内は暗めで、照明も薄暗い。

カウンター中心で、会話が自然に生まれる距離感です。

席の後ろには、全国のあらゆる絵馬がずらりと飾られていて、ふと視線を動かすたびに旅先の気配が混ざります。

カウンターにはたくさんのウィスキーなどのお酒が並び、奥には神社の映像や神棚など、神社を連想するようなものもありました。

カウンター席が8席、ボックス席が5席あります。

ひとりでふらっと。
みんなと賑やかに。

そのどちらも受け止めてくれる空気があります。

そして印象的だったのは、私がきた時から、すでに常連さんたちの談笑があって、会話の輪が自然に広がっていくこと。

誰かの話が別の誰かの話を呼び、はじめまして同士でも言葉がつながって、そこでまた新しい縁が結ばれていく。

「神社Bar HOLY」さんは、ただ静かに飲む場所というより、お客さん同士の関係性までほどよく結び直してくれる場でもありました。

 

「いまの気分」を言葉にして、メニューのない1杯を愉しむ

「神社Bar HOLY」さんでの注文スタイルは、メニュー表はなく、会話で注文します。

チャージと予算感

 

チャージ:500円
予算感(チャージ込み):2,000円~

たとえばカクテルなら、

・甘めがいいか
・酸味がほしいか
・ミルク系の気分か

そんな問いが、自然に差し出されます。

「おすすめはこれです」と決め打ちされない。

お客さんの言葉の断片を拾いながら、その日の「気分・温度・テンション」を一緒に整えていく。

この店では、1人で悩むことなく、バーのマスターがうまく決めてくれるので、あまりバーに行かない方でも安心して過ごせる雰囲気だと思いました。

 

ご縁を味わうお通しと、心に馴染むノンアルカクテル

まずはお通しとして駄菓子がいただけます。

中でも印象に残ったのが、ごえんがあるよチョコレート

5円玉と「ご縁」をかけて、神社にお賽銭を入れる文化になぞらえた1品です。

ノンアルコールでも流れは同じで、「今日は酸味がほしい」そんな一言から、柑橘の輪郭が立つ1杯が出てきます。

ちなみに今回いただいたのは、ノンアルカクテルのシンデレラ。

 

●シンデレラ 700円(税込)レモン・オレンジ・パイナップルを等分で合わせた1杯で、酸味はきりっと効きつつも、甘さがほどよく入っていて、角が立たない。

丸みのある酸味として飲める、優しい柑橘感でした。

ちょっとした「駄菓子」の追加もできます。

店内には追加でつまめる駄菓子も用意されていて、食べた分は、表示されている金額をお賽銭箱に入れるスタイルだそうです。

 

全国の神社映像×ジャパニーズウィスキーで、旅のような夜が生まれる

店内では、全国各地の神社の映像が流れています。

モニターはマスターの背後にあり、会話の視界の延長にふっと神社が現れる。そんな配置です。

 

そしてもうひとつの軸が、ジャパニーズウィスキー

ただ「有名銘柄があります」ではなく、ウィスキーも全国のものを取り揃えているのが面白い。

左から順に広島、金沢、富山、京都、鳥取など、さまざまな地域のウィスキーが並んでいました。

全国の銘柄を網羅したラインナップのなかでも、地元金沢の「白雷」をしっかりと用意しているところに、店主の地元愛とこだわりが感じられます。

そして、ふらっと顔を上げると、映像とグラスが重なり、「京都の神社を眺めながら、京都のウィスキーを飲む」そんな体験が、金沢で楽しめます。(※これはさきほどのシンデレラですが…)

出身地の神社が映ると、ふっと昔の話が始まったり。

旅先の神社が流れると、次の旅行の話に火がついたり。

ウィスキーは、飲み物でありながら、会話のスイッチにもなる。

その設計が、静かに効いていました。

 

「お酒なくして人生なし」店主が大切にする、神社より深いもの

店主は堀川さん。

以前は料理人として働いていたそうです。

とくに印象に残ったのは、胸元に「お酒なくして人生なし」と書かれたパーカー。

冗談みたいで、でも本気。「神社Bar HOLY」という店の芯にある「お酒=会話の起点」という考え方が、そのまま服になっているようでした。

そこから「もっと人とつながれる仕事がしたい」という思いが芽生え、2019年6月にこの店をオープン。

店先に鳥居があっても、マスターがいちばん大事にしているのは、神社そのものの荘厳さよりも、そこに宿る感覚です。

人と人がつながること。ちいさな会話が、次の話を連れてくること。偶然に見える出会いが、後から意味を持つこと。

「神社Bar HOLY」さんは、こういうものを「たまたま起きるもの」にせず、店のあり方として大切に扱っているように感じました。

神社に興味がある人も、ない人も。ここに集って、少しだけ身近に感じられたらいい。

旅行の予定がある人には、その土地の神社の話を。
金沢に住む人には、尾山神社の「ステンドグラスの由来」みたいな豆知識を。

そうやって、神社を「特別なもの」から日常に差し込める文化として編集していく。

「神社マイスターみたいな役割でありたい」そんな言葉が、しっくりきました。

 

『古事記』の物語が、夜の会話を豊かにする

「神社Bar HOLY」さんには、ときどき裏メニューのように古事記の一節を引いて、物語として解説するコンテンツもあるそうです。

堀川さん自身が、古事記や日本の歴史、そして「ご縁」の扱いにとても詳しい。

その背景があるからこそ、ただ知識を語るのではなく、その場の会話と結びついた深い物語として立ち上がる

自分ひとりで調べて読むのとは、また違った輪郭で届く時間になります。

占い師ではなく、古事記の解説者。

同じ言葉でも、その日の心の状態によって受け取り方は変わる。

おみくじのように、「いまの自分」に結び直していく。

お酒だけじゃなく、言葉や物語もつまみとして出してくれる。

この店の面白さは、そんなところにもありました。

「神社Bar HOLY」さんを外から見ると、神社の主張が前に出ている異様な空間。

でも、その奥にあるのは、縁を大切にする哲学と、会話で1杯をつくる文化でした。

金沢で、ちょっと気持ちがほどける夜を探している人へ。

「神社Bar HOLY」さんは、お酒と会話のあいだで、ご縁がつながっていく場所です。

INFORMATION

店名:

神社Bar HOLY(ホーリー)

住所:

石川県金沢市武蔵町11-5
(駐車場なし・近隣にコインパーキングあり)

電話番号:

090-1394-5343

営業時間:

18:30〜25:00

定休日:

火曜日

一人当たりの予算:

¥2,000〜

※記事内の情報は記事執筆時点のものです。正確な情報とは異なる可能性がございますので、最新の情報は直接店舗にお問い合わせください。

WRITTEN BY
ほしのつづみ

ほしのつづみ

ライター

 これまでコーヒー専門店での経験を経て、現在は地域のお店を取材し、その魅力を伝える活動をしています。  お店を訪れると、店主の想いが空間や商品に形となって表れ、その景色に心を動かされてきました。  私は、その想いを読者に伝わる言葉へと変えていく「媒体」でありたいと考えています。金沢を拠点に、地域で挑戦するお店や人々の魅力を、丁寧に届けてまいります。