白菊町|古民家で味わうイタリアン。「Paolo(パオロ)」という店名に込めたもの

白菊町|古民家で味わうイタリアン。「Paolo(パオロ)」という店名に込めたもの

にし茶屋街からほど近くのイタリアン「Paolo(パオロ)」さん。
古民家の扉を開けると、そこにはイタリアの時間が広がっています。
まるで橋を渡った瞬間、魔法にかかったかのようです。

この不思議な“異国感”の正体は、料理だけではありません。空間の作り方、言葉の端々、そして店名に込められたストーリーにありました。
オーナーの植田シェフにお話を伺うと、「Paolo」という名前が、この店の原点であることが見えてきます。

横浜から金沢へ。用水の向こうにイタリアの空気が流れ込む古民家レストラン「Paolo」

にし茶屋街からほど近い古民家レストラン

「Paolo(パオロ)」さんがあるのは、にし茶屋街からほど近く。白菊町の静かな通りを歩いているとふと目に留まる、どこか懐かしい古民家の佇まいです。しかし店の前を流れる用水を越えて扉を開けた瞬間、空気が変わります。

店内に流れる音楽、香り、雰囲気──思わず「ここ、本当に金沢?」と感じてしまうほど、イタリアの時間が広がっています。

 

素材を味わう贅沢。選べるランチコース

今回は、ランチコースPセット・Aセットをいただきました。

パスタはどちらのコースも「本日のパスタ」の2種類から選べるのが嬉しいポイント。
この日は「ベーコンと空豆のペペロンチーノ(ビゴリ)」と「海老のトマトクリームソース(リガトーニ)」の2種類でした。

パスタの種類はテーブルに運んでいただけるので、パスタの種類がわからなくても安心。シェフのこだわりと、心遣いが感じられます。

 

●ランチコース P 1,900円(税込)

サラダ・パスタ・パン・ドリンクがセットになった、気軽に楽しめるコースです。
+500円(税込)でドルチェを追加できます。

ベーコンと空豆のペペロンチーノは、見た目はシンプルですが、口に入れるとオイルの香りと素材の甘みが一体となって広がります。余計な味付けがない分、火入れや塩加減の繊細さが際立ちます。

 

●ランチコース A 2,800円(税込)

前菜盛り合わせ・パスタ・パン・デザート・ドリンクが付いた、少し贅沢な内容。
ゆったりとランチタイムを過ごしたい方におすすめです。

前菜は素材が見えないほどたっぷりとかけられたチーズと、旨味が凝縮されたベーコンが、野菜と良く合います。くるみの食感や香りも楽しく、この前菜だけでも「来てよかった!」と思わせてくれます。特に印象的なのが、たっぷりとかけられたオリーブオイル。しっとりとしたパンに含ませるだけで、手が止まらなくなるような存在感です。

海老のトマトクリームソース(リガトーニ)は、濃厚でありながら重たくなく、トマトの旨味がまっすぐ伝わってきます。運ばれてきた瞬間からチーズの香りが立ち上り、食欲をそそられます。

食事中はガラス張りの厨房の様子が見えるのも、ライブキッチンのような楽しさがあります。

デザートも甘さを重ねすぎず、素材の風味が生かされていました。食後のコーヒーと一緒にゆったりと贅沢な時間を過ごすことができました。

 

店名「Paolo」は、料理だけじゃない“人生の師”への敬意

「単なる“料理を教えてくれた人”というより、僕にとっては人生の師ですね」

店名の由来を尋ねると、植田シェフは少し間を置いてそう話してくださいました。横浜・みなとみらいのホテルで働いていた頃に出会ったのが、「Paolo」というイタリア人シェフです。彼のいる厨房の空気は、それまで経験してきたものとはまったく違っていたそうです。

「何でもやってみろ、という感じで、いつも対等な目線で接してくれていました。だから“この人のためなら頑張ろう”と思えたんです」

店名に人の名前をつけるのは簡単な決断ではありません。しかし植田シェフにとって「Paolo」は、味や技術以上のものを教えてくれた大切な存在でした。

 

イタリアに長くいたわけじゃない。でも“毎日イタリアに出勤していた”

店内の空気や料理の完成度から、てっきり長くイタリアで修行されていたのかと思っていました。

しかし「イタリアに長期滞在されていたのですか?」と伺うと、意外なお答えが返ってきます。

「イタリア自体は少し行った程度で、現地のレストランで働いたわけではないんです」

それでも本場の空気が感じられる理由は、別のところにありました。

「職場がイタリア語ベースだったので、日本にいながら“イタリアに出勤している”ような環境でした。会話もレシピも説明もすべてイタリア語で、話せないと仕事にならなかったんです」

英語は得意ではなくても、イタリア語は「ローマ字の感覚で入ってきた」と笑います。言語だけでなく、文化そのものが自然と体に染み込んでいった時間だったそうです。

 

“金沢で料理する”ということ。土地がレシピを変える

植田シェフは横浜で生まれ育ち、そのまま横浜で働いてきました。金沢への移住は、人生の節目が重なったタイミングだったといいます。

「父が亡くなった年に娘が生まれて、自分が父親になったタイミングでもありました。生活の場を見直そうと思ったんです。妻も、いつかは生まれた石川に帰りたいと考えていました」

金沢に来たのはコロナ前。すぐに店を始めたわけではなく、まずはこの土地で暮らしながら、場所探しを続けました。

子育ての環境としても、金沢の落ち着いた暮らしは大きな魅力だったそう。

ただ、実際に店を始めてみると、環境の違いは想像以上でした。

「横浜でのレシピのままだと、うまくいかなかったんです。湿度が違うので、パンもパスタも仕込みの進み方がまったく変わってしまって」

酒蔵や味噌、麹の文化が根付く土地であることも、料理人として納得する部分があったといいます。

植田シェフの料理は、金沢の空気に合わせて少しずつ形を変えていきました。それは料理でありながら、土地との対話でもあるように感じられます。

 

“引き算”のかっこよさ。塩とオイルだけで勝負する怖さ

そのため、イタリア料理に出会ったときの衝撃は大きかったそうです。

「フレンチはソースがベースで、ある程度まとめられます。でもイタリア料理は、素材に塩こしょうをして焼き、オリーブオイルで仕上げる。それだけで勝負するのは、シンプルだけどとても怖いんです」

飾らない、足さない。素材と火入れと香りで勝負する。その哲学が、そのまま表現されているようです。

実際にコースをいただくと、その意味がよく分かります。

オリーブオイルは「100種類くらい試して、僕とPaoloで選びました。これを超えるものはなかなかないと思います」とシェフがこだわり抜いたものでした。

パンが止まらなくなるほどのオイル。その違いに気づく人がいれば、それでいい──そんな静かな自信が感じられます。

こちらのオリーブオイルはお店で購入することもできるので、迷わずお土産に購入しました。

 

金沢で、続けていく。未来のために

「店のオープンがちょうどコロナのころと重なって、当時はどうなるかって感じもありました。」

それでも5年の歳月を経て、お店は少しずつ地域に根付いてきました。

「最初は“あそこでイタリアン?”って言われることもありました。でも、続けていくうちに、近所の方が食べに来てくれたり、“頑張ってるね”って声をかけてくれたり」

周囲にも新しいお店が増え、古民家に灯りがともるようになり、街にも少しずつ変化が生まれています。

「僕1人でできることなんて本当に小さいですけど、ここでちゃんと続けていくことが、何かのきっかけになればいいなと思ってます」

植田シェフの言葉は、イタリア料理と同じようにシンプルでありながら、芯があるように感じました。

料理で勝負し、土地に寄り添い、街とともに歩んでいく。

「Paolo」という店名に込められた敬意と、金沢で暮らす覚悟。その両方が重なり合い、料理の味わいをより深いものにしているように感じられました。

 

最後に、気になっていたことを伺いました。

「イタリア人のお客さまが来たときは、どんな気持ちになりますか?」

植田シェフは少し笑って、こう答えてくださいました。

「気が楽ですね。“イタリア人が来たな”という感じです。英語だと緊張しますが、イタリア語ならメニューや味のことも伝えやすいので」

さらに、こんなお話も。

「でもイタリア人に限らず、旅先で会った人って、その国の“大使”みたいなものじゃないですか。今日会った人が、僕からしたら“その国の代表”だったりする。逆に、今日来た人からしたら、僕は“日本代表”なんですよね」

だから、できる範囲で伝える。金沢のこと、道のこと、歴史のこと。「楽しんでね」と言葉を添える。料理だけじゃなく、旅の記憶まで良くしたい──そんなシェフの想いが、「Paolo」さんの“空気”を作っているのかもしれません。

 

お店の壁には「Paolo」のサインをはじめ、様々なメッセージが。

次に訪れる時には、どんなメッセージが増えているのか楽しみです。

INFORMATION

店名:

Paolo

住所:

石川県金沢市白菊町19-7
(駐車場なし・近隣にコインパーキングあり)

電話番号:

076-227-9909

営業時間:

Lunch 11:30~15:00 L.O.14:30
Dinner 18:00~22:00 L.O.21:30

定休日:

日曜・第1と第3の月曜

一人当たりの予算:

¥2,000〜¥3,000

※記事内の情報は記事執筆時点のものです。正確な情報とは異なる可能性がございますので、最新の情報は直接店舗にお問い合わせください。

WRITTEN BY
マイ

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ライター

2人の女の子のママです。 金沢の街中を流れる川沿いを犬と散歩する時間が大好きです。 散歩中に見つけた気になるお店に、家族で足を運ぶのが週末の楽しみです。 お店の方の想いや魅力を発信していきたいです。